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内容説明
大都会のビル群の下、眠りつづける無数の骨。考古学者によって掘り起こされた「古人骨」は、かつてこの町に暮らした近世人の姿をいきいきと物語る。町人か侍か。病死か、事故死か、はたまた人柱か。銭や爪、入れ歯など副葬品の意味とは――? けがや流行り病、食事や性生活、衛生状態や老後の暮らしまで、文献に残らない歴史を、科学の力で解き明かす。人骨をみると「わくわくする」という著者が手まねきする、都市古病理学への招待。
*単行本『八百八町に骨が舞う 人骨から解く病気と社会』に加筆、改題し、文庫化したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
60
江戸時代の古人骨について、どんな場所で、どんなふうに見つかるか実例を挙げるところから始まり、生々しい屍蠟化した遺体や脳みその話しには驚きました。梅毒やハンセン病、くる病などによる骨病変を研究することで、その都市でどんな病気が流行っていたか、ある程度わかってくること。その結果、住民たちの暮らしぶりも類推できること。興味深いです。また、特殊な亡くなり方をした人に行われる鍋かぶり葬という存在を初めて知りました。縄文人の古人骨にも土器を被っているものがあるとか。後半の江戸とロンドンの対比も分かりやすかったです。2018/06/11
CTC
8
18年角川ソフィア文庫、単行本は06年吉川弘文館。著者は明大黒曜石研究センター員で、同大文学部兼任講師、古人骨を考古学と人類学の手法で研究しているそう。とはいえ本書内容は江戸とロンドンの17〜18世紀の人骨からの考察に限っている。この頃のものですら幼児の骨は殆ど残らないそうで(先の大戦で南冥の地で散華された方々の遺骨は、多湿故に野晒しのものは殆ど残らず、埋葬の分も風化が激しいと聞く)、学問上の限界はありそうだ。それでも増上寺改葬の際の徳川秀忠のように状態が良ければ屍蝋化して髪や爪も残存の場合もあるという。2019/09/03
maqiso
6
江戸の地下は水気が多いため人骨がきれいに残りやすい。庶民の墓地からは高密度で棺が見つかる。梅毒は進行すると骨にも影響するため地域・階層による蔓延の差がわかる。江戸時代の人は他の時代に比べて低身長であり、骨の成分から食物を推定するとたんぱく質が少ない。骨に現れない病気も多いが、史料には残されない情報もあり、当時の環境を推定できる。内容がとびとびで読みにくい。2023/03/05
しょうゆ
6
思っていたよりも話題が多岐にわたるけれども、面白かった。骨からそんなことまでわかるのか…と驚くことばかりだった。大都市と地方の対比、江戸とロンドンの対比などわかりやすかったと思う。説明不足に感じるところもあるが、専門書じゃないからちょうどいいのかも。もし将来自分の骨が研究のために発掘されたらどんな所見を書かれるのか…そんなことを考えながら読んだ。2020/07/31
おらひらお
5
2018年初版。著者より拝受。考古学では骨の分野は別の基礎的な修練を経ないと取り組むことができないので、考古学と骨の両方に精通している著者の本は説得力がある。江戸時代の梅毒の多さには驚くが(笑)2018/06/20