内容説明
「我が職掌はただクロカネの道作りに候」リニア中央新幹線などに代表される鉄道技術大国・日本は、この男に始まる! 鉄道(クロカネの道)を日本へ――。幕末、伊藤博文や井上馨らとともに、長州ファイブの一人として国禁を犯して英国へ渡航。伊藤らが政治の世界を突き進むなか、ひたすら鉄道敷設に人生を捧げた男、井上勝。鉄道の敷設権を要求するアメリカの主張を退け、さまざまな反対の声にも粘り強く交渉し、ついには日本人のみによる鉄道敷設を成し遂げ、日本の「鉄道の父」と呼ばれた男の生涯を感動的に描いた長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
225
日本の鉄道が、なぜ狭軌になったのか? 前々から不思議だったが、著者の細かい取材の結果か、妙にリアリティをもって納得できた。維新の三傑など、幕末・維新のこれまでの「偉人」の陰で、知られざる人たちが実は時代を作ってきた、との思いが沸き上がる名著。さすが、江上剛。みずほ銀行・築地支店長から作家に転身しただけあって”経済小説”の面白さと、これまであまり知られていなかった井上勝の凄さが自然に伝わってきた。2020/11/29
あすなろ
76
長州の松陰に影響された攘夷思想の若者は、進んで人間の器械となり、明治維新後20年、我が国の鉄道敷設に邁進した井上勝の物語。ゲージを狭軌に決したり、攘夷思想よりも開国文明キャッチアップ等、それら知識も興味深いものであったし、東海道・中山道ルート選択も興味深かった。但し2点。もう少し描き込んでいっても良いのではないか?そして、最後のエピソードは全く必要ナシ。その辺りが何故か惜しいのである。2017/07/31
もえたく
16
山本巧次『開化鐵道探偵』に依頼者として登場した「鉄道の父」と呼ばれる井上勝の偉人伝。長州五傑の1人として井上馨や伊藤博文と共に密航してロンドンに渡った青年時代から、ひたすら日本全国に鉄道を開通させようと奔走した雷親父と言われる時代までが描かれ、益々興味深い人物だと思いました。さらっと触れられているゲージの狭軌採用や中山道ルートから東海道ルートへの変更について、もう少し知りたくなりました。2018/02/23
trazom
9
鉄道の父と呼ばれる井上勝の生涯を描いた小説。イギリス留学時代を前半とし、日本初の鉄道を敷設させた業績を後半として、淡々とその実績が描かれる。若き技師長として献身したモレルへの感謝、大阪駅の位置決定の経緯、中山道ルートから東海道ルートへの変更など、日本の鉄道黎明期の苦労話を知ることができる。長州ファイブとして一緒に若き血を滾らせたが、伊藤博文や井上馨のように権力の階段を上った人物に対し、井上勝は、鉄道というロマンに賭け、現場に立ち続けてプロジェクトを推進した熱血漢であった。その清々しい人生に拍手を送りたい。2017/04/18
Yasushi Hanada
9
幕末期に鎖国の禁を破って密航した長州ファイブのうちの1人である井上勝が邁進した鉄道事業の話。知らない事ばかりで興味津々で読めた。2017/05/08