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内容説明
オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件から20年。あの頃、教祖・麻原彰晃の後継者としてメディアを賑わせた、ひとりの女の子を覚えているだろうか。アーチャリー正大師、当時11歳。社会から隔絶された地に育った彼女は、父の逮捕後も、石もて追われ、苦難の道を歩んだ。本書は、アーチャリーとしてではなく松本麗華として歩むために、父の逮捕の日から止まっていた時計を、自らの手で動かそうとする苦闘の記録である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
38
オウム真理教の麻原教祖の三女の自伝。 11歳で教団の幹部となるもオウム事件で教団は消滅。大学からは入学を拒否され麻原の娘というレッテルは容易には消えず苦労を余儀なくされます。 著者は、オウム事件の首謀者が麻原だったかどうかを終始留保。 麻原が盲目であることを利用して、自身の立場を有利にしようとする駆け引きが幹部の間であったことを踏まえ、サリン事件は麻原の指示ではなく側近が教祖の権威を笠に着て起こした事案だったのではないかと疑問を呈します。 メディアを通してしかオウムを知らない自分に気づかされる一冊です。2019/12/04
きょちょ
32
ひさびっさの辛口~。著者が麻原の三女で、それだけでいろいろ迫害されたことは同情する。しかしこの本はある女性のただの回想録でしかない。だから当然主観だらけなのはOK。父親に溺愛されて父を想う気持ちはよく理解できるが、ならば「オウムとは何だったのか」という章を書くならせめて様々な事実を自分なりに知ろうとし考え書かなかったのか。この事件はあなたは教祖以外の仕業と思ってますか? 長弟拉致に関しても、勉強道具を取りに行くのに、何故「未明」に行ったのか?「反省しています」と書いていることもどこを反省しているのか?⇒ 2018/06/24
アーロン
17
親は選べない。子も同じ。自分の親が犯罪者だったらどうだっただろう?と何度も考えた。アーチャリーの持って生まれた境遇は、計り知れない程の困難だ。アーチャリーは背負った運命を受け入れ、前に進んでいこうとする姿勢に涙が出た。それを支えた人々からの勇気ある言葉にも感動した。p241「あなたが訴訟を起こして認められることはほとんどない。麻原彰晃の子だから。しかし何もしなければ何も変わらない。『そうではない』と言わないと変わらない。自分の意識も変わらない。何回も何回も挑戦して行かないと」穏やかな生活ができるよう願う。2021/01/26
おおかみ
11
壮絶な人生である。そうとしか言いようがない。「オウムの中から見た景色」も、社会に出ようとして受けた迫害も、なおも父親を信じようとする心理も、そんな生涯を丁寧に辿り、そのうえで大切にしようとする著者の覚悟も、何もかもが想像を絶する世界である。三女だけではない、他の関係者の人生もすべてが壮絶だったはずだ。それだけ重大な事件なのだと言えばそれまでだが、検証が十分進められたかどうか、それすらわからないまま、事実上の終結を迎えた。2018/07/28
lily
10
麻原彰晃の娘として,教団内でアーチャリー(サンスクリット語で先生)として過ごした日々を赤裸々に綴る。共に過ごした信者や父が逮捕され,閉鎖的な世界はあっけなく瓦解するが,彼女は鬱になりながらも自分を強く持ち続ける。印象的なのは,メディアのいわれなき中傷に苦しむ中で彼女を救った大学の友人。実際彼女の人となりを見た友人は屈託ない笑顔を向けるが,「親に仲良くするなと言われた」と抵抗感を持つ友人も多かったという。犯罪者の娘が犯罪者になるわけではないという当然の事実が分からない偏見に凝り固まる人々は,案外大人に多い。2020/07/14