内容説明
生き残れるか!?戦慄のパニックミステリー。
名声のために罪を犯した過去を恥じ、いまは猟師として各地を旅する「私」。ある日、迷いこんだ村の村長から奇妙な警告を受ける。
『森には、秘薬を作れる「赤ずきん」と呼ばれる少女たちが住んでいる。赤い月の夜、彼女らはオオカミの化け物に喰い殺されるが、決して救おうとしてはならない』と。
だが、出会った「赤ずきん」のひとりに、かつて見殺しにしてしまった少女の面影を見た「私」は、警告を無視して彼女たちを護りぬくことを決意する。
「私」の策は、森の外れの「塔」に、六人の「赤ずきん」とともに朝まで籠城すること。だが、その途中で「私」たちは化け物から思わぬ襲撃を受ける。そうして、「私」は知ることになる。「赤ずきん」のなかに、裏切り者がいることを――。
息詰まる攻防の果てに、「私」は少女たちを護りきれるのか? 第12回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞。戦慄のパニックミステリー!
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
125
六人の赤ずきんを巨大な狼から守って一夜の籠城戦、という帯に偽りなしのパニックホラー。本筋はシンプルであるが、仕掛けの上乗せが巧みで興味が持続。赤ずきんの秘薬の効果を利用した展開や闘いが、能力バトル的に楽しい。中には裏切り者がいて、誰なのか探りながら読んでいく趣向はミステリー的でもある。物憂げな雰囲気のある文章は確かに「ダークメルヘン風味」。赤ずきんだけでなく、いろんな童話を捻った切り口で盛り込む趣向も興味深い。といった次第で多様な側面から読める本作。応募時のタイトル「グリムの赤い万華鏡」も捨てがたい。2018/06/12
藤月はな(灯れ松明の火)
95
ミステリ・マガジンでも紹介されていましたが紹介されるのも納得のミステリー。特に秘薬の効能や狼や赤ずきんを巡るワイダニットは見事としか言えない。自己陶酔的な贖罪行為ほど、傍迷惑なものはないので、正直に言うと猟師には嫌悪感を持ってしまいました。しかし、嘘は真になったということかな。それに彼女たちが最後、当たり前に「行った」事に怯えたり、強い忌避感を持たずに普通に接してくれる男性は結構、貴重ですしね(黒笑)後、シャルル・ペロー、若しくはグリム童話の要素がそこかしこにあるのでそういうのを見つけるのも楽しかったです2019/03/12
雪紫
73
1年に1度狼に命を狙われるのは秘薬を作れる少女達ーー赤ずきん。しかし、猟師の助けで籠城した彼女達の中には狼を利用して赤ずきん達を狙う青い目の魔女が紛れていた。特殊設定なパニックホラーミステリ。一部赤ずきんの判別がしづらいという弱点は存在するけど(闇の深さは別で)、狼の驚異や、個人的に疑ってた赤ずきんの脱落!?など意外と頭脳戦で秘薬の使い方込みで読むのが止められないハラハラものだし、実はかなりフーダニットです。・・・ラストがちょい不穏でゾッとしたけど・・・深読み、だよね。2022/05/20
まりも
70
過去に罪を犯した男が、化け物と裏切り者の魔の手から赤ずきんたちを救うことが出来るのか。自分の経験上ガガガが時々出してくるパニックホラー作品にハズレはない。今作も例外ではなく、新人作家とは思えない力量の高さを感じた。様々な童話を元ネタにした世界観、魔女の秘薬というアイテムを駆使した手に汗握る緊迫感溢れる展開だけでも満足できるクオリティなのに、更に裏切り者は誰なのかというミステリー要素まであるなんて、そりゃ面白いに決まってるわな。多少雑な部分も目につくが、そんなのが些事に感じるくらいの力がある。良い作品だ。2018/05/23
もも
57
赤い満月の夜だけに出るオオカミから六人の赤ずきんを護るお話。…このハラハラする感じ、ホラーゲームのようですっごく好きでした!真実を追っていくシーンなんてもうわくわくしっぱなしでしたね‼︎最初から最後まで、たくさん楽しませていただきましたよ(^^)v 裏切り者が誰か、一応考えながら読んではいましたが…まぁ当たりませんでしたね(^_^;) よく考えれば分かるものかもしれませんが。それはともかく、とても面白かったので作者さんの次回作にも期待です!2018/06/29