岩波新書<br> 津波災害増補版 - 減災社会を築く

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岩波新書
津波災害増補版 - 減災社会を築く

  • 著者名:河田惠昭
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2018/05発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004317081

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内容説明

「必ず,来る!」.東日本大震災の直前にそう警鐘を鳴らし,震災発生後に大きな反響を呼んだ本書.その後の調査研究と最新の知見データをふまえ,311大津波の実相と,南海トラフ巨大地震で想定される被害の様相について増補する.さきの大震災の優に十倍を超える,決して避けられない「国難災害」.その減災・縮災対策の緊急性を訴える.

目次

目  次
   まえがき

 序 章 “安全な津波”はない
   五〇センチなら大丈夫なのか?/なぜ津波は侮られるのか?
 第1章 津波は恐ろしい
  1 津波をめぐる誤解
   津波は「高い波」である?/津波は一度来たら終わる?/津波は引き波からやってくる?/津波は第一波が一番大きい?/大きな津波がやってこないことが歴史的にわかっている?/高い海岸護岸や堤防があるから大津波警報が出ても避難しなくてよい?/インド洋大津波のような被害は日本では起こらない?
  2 津波の恐ろしさを知る
   インド洋大津波(二〇〇四年)/明治・昭和三陸大津波(一八九六年・一九三三年)/チリ津波(一九六〇年)/北海道南西沖地震津波(一九九三年)
  3 教訓が忘れられたとき
   大阪──宝永地震津波(一七〇七年)と安政南海地震津波(一八五四年)/ハワイ島ヒロ──アリューシャン地震津波(一九四六年)とチリ津波(一九六〇年)
 第2章 津波災害はくり返す
  1 津波のメカニズム
   太平洋を伝播する津波/津波の破壊力/流れとしての津波/高波や高潮とは違う/遠地津波と近地津波
  2 変形する津波
   周波数分散と方向分散/屈折と回折/浅水変形と反射/共振とエッジ波/津波レンズ
  3 くり返す津波災害
   津波を起こすプレート境界(間)地震/地震空白域/津波考古学のすすめ/文明を滅ぼした津波
  4 日本の津波常襲地帯
   三陸沿岸/土佐湾沿岸/熊野灘・紀伊水道沿岸/道東海岸
 第3章 津波情報に注意せよ
  1 「この地震による津波の心配はありません」
   津波発生の経験則/津波情報の限界/車で山へ避難/徒歩で避難所へ
  2 情報だけでは助からない
   情報の泣きどころ──避難行動に結びつかない/津波情報の活用の課題──とっさの判断を間違う/地震対策を兼ねる/津波来襲時の要援護者
  3 情報を避難に結びつける
   津波警報・大津波警報/津波避難勧告・指示/ハザードマップ
 第4章 津波が来たらどうする?
  1 もしも東京に大津波が来たら……
   市街地はん濫の恐怖/地下空間水没/長時間の湛水/広域避難/津波火災
  2 避難しないと何人犠牲になる?
   津波による人的被害の計算方法/南海トラフ巨大地震で津波避難しない場合の犠牲者数/つぎの関東大震災での津波被害予測
  3 過去の教えを検証する
    「津波てんでんこ」/ 「津波が来る前にご飯を炊く余裕がある」/ 「地震の揺れが小さいと津波も小さい」
 第5章 東日本大震災の巨大津波と被害
  1 なぜ巨大な津波が発生したのか
   プレート境界地震と津波地震/発生メカニズムの解明/過小評価した巨大津波/レベル1とレベル2の津波
  2 なぜ膨大な犠牲者が発生したのか
   大量の犠牲者の発生と地震災害の約四倍の死亡率/津波防波堤・護岸の被災/低い避難率と車避難/津波ハザードマップの限界
  3 津波復興まちづくり
   多重防御/津波防災地域づくりに関する法律/高台移転事業
 第6章 南海トラフで予想される巨大津波と被害
  1 新たな南海トラフ巨大地震像
   地震規模の拡大/大震法の見直しと四つの異常現象/政府のガイドライン/気象庁の臨時情報
  2 強い揺れと巨大津波の被害
   想像を絶する被害/東海地方/紀伊半島/大阪湾/徳島県・高知県・宇和海/日向灘/沖縄県・鹿児島県・熊本県・長崎県/瀬戸内海
  3 いかにして津波被害を少なくするか
   なぜ逃げないのか/津波避難タワーの隠れた効果と地震・津波観測監視システム(donet)
 終 章 津波災害に備える
  1 日本の津波対策と課題
   津波の危機管理/津波防災施設・装置を用いた防災/漁船・養殖いかだ被害対策/津波防災教育/ 「世界津波の日」の制定
  2 生存避難を実行する
   自助努力と生存避難/語り継ぐことの大切さ/持続可能な津波減災・縮災社会に向けて
   あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

coolflat

15
19頁。津波が沿岸に来襲すると、ほぼそのまま反射して今度は沖に向かう。だから南海地震で発生した津波が紀伊水道を北上するとき、東西の和歌山県と徳島県では津波のキャッチボールが行われる(これを多重反射という)。このため、たとえば田辺市にはおよそ20分ごとに津波が来襲するようになる。同じことは豊後水道をはさんで愛媛県と大分県でも起こる。瀬戸内海に津波が入れば、複雑な海岸線と多くの島があるので、津波は反射を繰り返し、それらが時空間に重なるから大変複雑になる。2024/03/16

モリータ

14
◆2010年刊、2018年増補版(本書)刊。著者は京大工学・情報学研究科や災害・防災関係の研究所長を経て、関大特任教授・人と防災未来センター長。専門は防災・減災、危機管理。著者は「避難すれば助かる」という事実を知るために、津波災害に関する包括的知識として自然科学、社会科学、実践科学の研究成果をバランスよく伝えようとする。確かに、津波にまつわる誤解、物理的なメカニズム、東日本大震災を含む歴史上の津波災害や来るべき南海トラフ大地震、避難や減災対策など、広く具体的に扱われている。2022/03/03

うぉ

13
来るべき災害に備え人命を守ろうと必死に研究し本を執筆する彼らからすれば、僕ら一般市民は極めて無能なのかもしれないと思った。僕ら一般市民は、過去の災害の勉強をしないし、避難勧告を出しても動かないし、津波が来ているかもしれないのに海岸を見に行くし、そしてこの本すら読まないのだ。まずはやれるべきことをやらなくては。2019/04/16

mutsumi

4
卒論準備の一環として津波災害を知るために読んだ。 津波は引き波から始まるわけではないし、避難は垂直避難が有効ということなど、津波対策として何をすべきかの知識が得られたと思う。 中でも東京の津波被害は万が一の事態の時にはかなり深刻そう。お出かけするのが好きだから、出先で津波にあった時にどうすべきかを考えておくと生き残れるかもしれない。2022/08/21

よし

3
発刊3か月後に3.11が発生したという有名な新書の増補版。兵庫県の「人と防災未来センター」センター長であり、防災学・減災学の第一人者の著者が津波のメカニズムや津波対策などを分かりやすく解説したオリジナルの内容にその後の知見を加え、東日本大震災の検証と南海トラフ地震による津波予想を記述した章を新たに追加。「逃げるしかない」ことを伝えていくことの大切さ、個人・地域社会・行政や企業がそれぞれ(急いで)津波災害に備えることの重要性が良く分かります。2018/05/16

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