内容説明
「じいちゃんなんて、早う死んだらよか」。
ぼやく祖父の願いをかなえようと、孫の健斗はある計画を思いつく。自らの肉体を筋トレで鍛え上げ、転職のために面接に臨む日々。
人生を再構築していく中で、健斗は祖父との共生を通して次第に変化していく――。
瑞々しさと可笑しみ漂う筆致で、青年の稚気と老人の狡猾さを描ききった、羽田圭介の代表作。
新しい家族小説の誕生を告げた第153回芥川賞受賞作が待望の文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
285
個人的な事ですが、前回『Phantom』を読んで皮肉の効かせ方が面白くって、そんな内容を期待したのですけれど。この本はね、皮肉と言うにはちょっと厳しすぎるきらいがあってね。文學あるあるの主題がの掴み難さも相俟ってね。儂の場合、まだ幾らか時間を残しているとは思いつつも、おじいさんの境遇と心情を慮ってしまうよ。辛い。介護のやり方は将来、今とは違う方法を取られるのではないかと思いますが、多くの人にとって負担の少ないものに進化して欲しいな。その前に、健康寿命が長くなる様にケアしないとね。あぁ、変な事言っている。2025/05/24
カピバラKS
161
老祖父を介護する若者の物語。認知症老母を同居介護している身として、介護問題を考えつつ読む🤔この物語の老祖父も我が家の老母も、常々「死にたい」旨を口にする。しかし、両名ともに内心では「まだまだ自儘に生きたい」と思っているようだ。尊厳死選択の難しさを想う😓また、親子介護は嫁姑介護より惨況になるという。被介護者が自儘を言い易いからだ。老母は介護サービスを介護職員等に気を使うから利用したくないと言うが、裏を返せば子供のカピバラKSには大して気を使っていないのだ。介護虐待の背景が垣間見える😮💨2023/12/20
ALATA
142
就活中の健斗は要介護老人の面倒を見ながら筋トレと宅建取得に励む日々。息苦しい生活の中で、祖父の終末期の切実?な挑戦に手助けは必要かと悩む。「早う迎えに来てほしか」・・・なんか悲しくなる。老人に席を譲る行為は足腰を弱らせることになるのではないか。利己的なメンタリティーはすごく歯がゆい。己の優しさを見せることはまだまだ経験不足と見た。★4※羽田さん初読み。ユーモアがあって好感が持てます。「寂しくなるねぇ」就職が決まった健斗に「じいちゃんのことは気にせんで頑張れ」には涙。2023/09/30
ゆのん
129
タイトルの『スクラップ』と『ビルド』が様々な箇所で形態を変えて出てくるところが面白い。老人=弱者というイメージはもはや昔のものだと思う。電車などで親切心を出し席を譲っても『年寄り扱い』と怒られる。いやいや、完全に年寄りで杖も持ってるじゃないですか。こんな経験をするとうかつに行動できない。見た目は弱そうに見えても本作の祖父のようにしたたかさも備えているのだとすればこちら側にもある程度の計算やしたたかさは必要なのかもしれない。2018/05/25
k5
83
ややこしい風に言うと、人間を機能の集合体として考える、という話かな、と思います。老いていく祖父と若いけど若さを持て余している孫を、その機能性の違いを意識しながら描いているのだと。で、単純に言うと、じいさん早く死なないかなあ、という話です。一緒に住む存在を、家族とかそういうのを一旦置いておいて、不快の源泉と見なすのは、最近の小説の流行りのようにも思いますが、オチがつけにくいので読んでる側も終わって戸惑います。「粉飾決算をした会社の子会社」という響きは好きでしたが。2020/08/29
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