内容説明
牧師の家に生まれ、戦争では死にかけ、東大に入学しながらストリップ劇場に転がり込んだ男、田中小実昌、通称コミさん。香具師をやったり、米軍基地で働いたりしながら翻訳や創作を始め、いつの間にか直木賞作家に…?! そんなコミさんの、人に優しく「物語」に厳しいエッセイを精選。入門編にして決定版! コミさんの「目」は、今も輝きを失っていない。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
90
田中小実昌は本名だそうだ。初っ端から面白すぎる。或る日、書き上げたはずの55枚の小説原稿が見つからない。奥さんがチリ紙交換に出してしまったらしい。「いい小説だったの?」と、奥さんの一言は、泣くに泣けない、笑えない話である。ご自身を「ボクはエロ小説を書く、スケベなオジイとして世間にとおっている、いいかげんな男だ」と謙遜されるが、意外とシャイな人だと思う。テレビでしかお逢いしたことがないが、読み終えて人柄がよく分かりました。気取らない媚びない、そして勉強家な人だと確信した。つぎは小実さんの小説を読んでみたい。2022/06/05
kinkin
87
自分のこと、旅のこと、映画やコトバのこと。私は著者の田中小実昌さんは大のファン。ずっとむかしに読んだ「ポロポロ」や「自動巻き時計の一日」に書かれていたような日常が淡々とこの本のエッセイにも書かれている。戦争の体験も悲惨なところを目にしたり体験したりしているのだけどそこもコミさんらしく描いてある。翻訳あれこれというエッセイの中に翻訳は裏切り行為ということがあったり戦時中の体験談、香具師の口上やストリッパーとの交友なども楽しめる充実した一冊だ。再読したいな2018/02/07
阿部義彦
21
コミさんの文章を初めて読みました。戦争のドサクサから、東大に入るも、香具師、バーテン、ストリップ劇場、米軍基地で働いて、通訳や翻訳を必要に応じてやっていたのが幸いして、いつの間にやら直木賞作家になりました。生い立ちから、いかがわしい交友関係、そして友の死、父母の事まで、文庫オリジナルで早わかりでした。形容のしかたから高学歴なのはわかる人には分かるけど、とにかく飾らない優しい人だったのだなあ、と思いました。2017/12/30
まこみや
19
再読2024/01/20
駄目男
16
この人の本はある面読みにくい。本人の弁によれば漢字を知らないと言っているが、確かにかなが多い。の割には難しいことを平気でのたまう。それもそのはず東京大学文学部哲学科中退というからよく解らない。彼は、「哲学こそは、真に普遍的な、真理のうちでも真理的な真理を語るもの、なんてふつうおもわれているようだけど、じつは、小説を読むのとおなじように、哲学の本も読んでいいんじゃないか、とぼくはおもいだした」と言うが、私には苦手な哲学を小説のようには読めない。この人のエッセイの面白さは多くの職業経験と酒、旅、2023/10/15
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