内容説明
強大な外圧を前に倒幕を果たした維新の志士と、開国の波をのりこえ産業の近代化に歩み出した豪商農を支えたものは、澎湃とする「独立の精神」だった――。黒船来航から西南戦争まで、四半世紀におよぶ近代国家揺籃期の光と影は、現代にまで続いている。人々が新しい国のかたちを模索した激動の時代を、政治や社会そして経済・商工業をふまえて立体的に描き出す、清新な明治維新通史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
22
明治維新の流れを政治だけではなく、経済の視点も入れた一冊。1989年に出版された本の文庫化のため、最新の研究と比べると少し古い印象のものもあるが著者が経済学の著名な教授ということもあり、説明が上手く、興味深い。特に幕末は幕府も薩長も軍備の整備をするために海外から装備や兵器を大量購入するが「そもそも支払いに使う金銀不足で貿易に制限をかけていたのにこんなに大量購入して大丈夫か」と心配していたら、明治政府は金銀不足で外貨獲得に躍起になるという経緯に違和感なく入れたので構成としての面白さも感じた。2021/11/11
nagoyan
12
秀。本書は、名著の89年小学館刊「体系日本の歴史12巻「開国と維新」」を講談社学術文庫から書名を改めて刊行したもの。本書は通説に従ってペリー来航から西南戦争の終結までの時期を明治維新史として描く(著者は明治憲法体制と成立と日本産業革命までを維新期として捉える)。日本産業革命の経済史家である著者の目から見た「明治維新」。叙述の過半が政治史となるのはやむを得ないが、金流出を阻止するための改鋳が招いたインフレが幕府に対する豪農商の信頼を棄損し、一部で倒幕運動の高揚と結びつく。ただ、維新自体の市民革命性は否定。2021/04/14
Hiroshi
7
今年は幕末維新史に関連する本を遠山茂樹・松本健一・岡義武と読んだので、副題の方で纏めてみたい。幕末維新の歴史は簡潔で良くまとまっている。19世紀中葉にはかなり活発な工業生産が市場目当ての商品生産として営まれていた。安政5年(1858年)に日米修好通商条約が結ばれる。そして翌年7月に神奈川・長崎・箱舘の3港が開かれた。貿易が始まる。外商は内地通商が禁止され、横浜居留地で貿易取引がなされた。外商は貿易決済に現金取引を要求した。横浜の引取商と売込商は江戸時代に整備された為替取引ネットワークを使い要求に応じた。2025/11/30
Mitz
3
幕末〜明治初期に日本が辿った道がよく分かる内容。政治、経済、外交、文化など歴史を織り成す要素がバランスよく網羅的に記述されており、入門書としてもおさらいの書としても適している。徳川を頂点とした幕藩体制から近代的な中央集権体制へと短期間で変革を遂げ、植民地化を回避した事は奇跡といえる。一方でこの書では“維新”という輝かしい言葉の裏に隠れた、影・負の面もしっかりと記されている。時代が変わる時に必然的に伴う産みの苦しみというべきか、塗炭の苦しみを味わった人々、そして多くの流血があった事を我々は忘れてはならない。2018/06/02
せいや
2
アジアが西洋列強に食い物にされる中、日本のみがかろうじて独立を保つことができたのは、明治維新を主導した維新志士たちだけでなく、民間の商人や農民たちが「独立の精神」を持っていたからであった。それまでの体制や仕組みを根本から作り直し、近代国家へと産まれる変わる明治維新期の政治・社会・経済・産業と、幅広い視点から描く通史。2018/05/28




