内容説明
環八で偽装外交官ナンバーのSUV車が事故に巻き込まれた。乗っていたのは医師二人と麻酔薬で眠らされた男女で、拉致事件の疑いがかかり、捜査一課で祖父も警察官だった南雲、娘が心臓移植待ちをしている茂木らが捜査にあたる。調べが進むうち、厚生労働省の向井俊介が調査中の年金詐取事件とこの拉致事件のかかわりが見えてくる。その背後には複雑な問題をはらんだ哀しき組織的犯罪があった――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
146
読み友さんオススメの吉田作品初読み。不審な自動車事故の事件を追う南雲ら警察サイドと、不正年金受給の疑いである人物を調査する向井ら厚労省サイド、二つの事件が思いもよらぬ接点で繋がることとなる。死にたい者と生きたい者それぞれの命を、需要と供給の法則に簡単に当て嵌めてしまうことは、倫理的にも愚かしいことではあるが、犯人の言い分や主張、そして大切な人を何としても救いたいと切望する人の願いを、否定も責めも到底できないという思いが強く残る。非常に重い問題提起を孕ませながら、絡み合う人間模様で読ませる骨太な作品だった。2017/01/22
しんたろー
124
向井シリーズ第3弾。前2作までのトリック主体から社会派に舵を取った創り……臓器移植の問題点を突きながら命をテーマにした意欲作だと思うが、ヒューマンドラマとしては強引な点が散見して、正直言って乗りきれなかった。移植を待つ患者を救おうと、秘密を守るためには同業者さえも殺すのが……?? また、今回の主人公である南雲も、シリーズ主役の向井も「正論くん」が鼻について……。法律が全て正しいとは思わないが、どちらの偏った考え方にも頷けるような心情描写が欲しかった。世の中は白黒だけに色分けできないものだと思うので……。2017/06/10
いつでも母さん
116
シリーズ物とも知らずに・・が、ここからでも十分面白かった。出たよ、出ましたよ~警察の『守ろうとしたのは警察という組織だ!』論が。(汗)しかし臓器移植を扱った話は辛く、ドナーを待つ家族の気持ちは計り知れない。年金不正受給とどこでどう絡むのか気になって、どんどんページを捲るのが早くなった。死にたい者と臓器移植の仕組みは必要悪・・私は100パーセント否定出来る答えを持たない。南雲班長、組織に生きても正義の人であれ!そして、厚労省・向井はこの先もこのスタンスなのか?気になるわぁ。(笑)2017/03/13
Satomi
82
年金不正受給事件と、環八で起きた玉突き事故。年金局調査室の向井と捜査一課の南雲が追う不可解な事故。この2つの事件が交差し大きな事件へと…。臓器移植をめぐる医療の歪み。本音と建前、矛盾だらけの現実とどう向き合うのか。真相はなんとも苦く切ない。声高に必要悪を認める事は出来ない。ただそう思ってしまう気持ちを非難する事も出来ない。秤にかけていい命なんてないのだから…。2017/06/01
ゆみねこ
72
一件の交通事故、死亡したのは2人の医師と身元不明の麻酔で眠らされた女性と瀕死の男性。捜査する刑事・南雲たち。同時進行で年金の不正受給の疑いのある事例を調査する向井。一見つながりのないような事件が複雑に関わってきて、南雲の同僚・茂木の家族の切ない事情も。向井君、今回はあまりハメを外してないし、大人しい。2017/10/29




