内容説明
地球上のすべての生物をつくっている「生体膜」は、バクテリアからカビ、昆虫、植物、私たちヒトを含めた動物に至るまで、どんな生物もほとんど同じ分子構造(脂質二重層)をしています。そして、エネルギーの生産や物質の輸送、細胞の形態形成、情報の伝達など重要なポイントには必ずと言ってよいほど生体膜が深く関わっています。生体膜が今とまったく違った分子構造だったとしたら、高度な知能をもった生物に進化することなく、単純な単細胞生物のままだったかもしれません。
前半では生体膜の構造と働きについて丁寧にわかりやすく解説し、後半では原核細胞から真核細胞、多細胞生物へと進化する道筋の仮説を新たな視点で紹介して、生物進化において生体膜の果たした役割の全体像をやさしく紐解きます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
haruka
22
40億年の地球生物の歴史のなかで、真核細胞の誕生は「たった一度きりの大事件」だった。真核細胞は原核細胞とくらべてあまりにも複雑だが、その仕組みが徐々に獲得されていった形跡はまったくなく、進化の中間体が存在しないミッシング・リンクである。一度、しかもたった一種類の真核細胞へと進化を遂げたきり、別タイプの真核細胞も出現していない。地球のどこかで奇跡的な条件が同時にそろったとしか考えられず・・生体膜のふしぎな特徴をヒントに、そのすごい一瞬にせまっていく書。知的生命の誕生する確率ってとんでもなく低いんだろうな・・2024/08/14
maimai
1
生体膜に関する様々な現象(特に膜輸送)の観点から、生物の進化において、生体膜が重要であることを論じている。膜間でのイオンの濃度勾配でATPを合成するため、細胞膜でしかこの反応を行えない原核生物は、多細胞化しづらかったのではないかという指摘は目からウロコだった。中高の生物では軽く扱われがちな生体膜の重要性について論じた良書。2018/03/29