内容説明
反響を呼んだ朝日新聞連載「パラダイス文書を歩く」の書籍化。バミューダ諸島、アフリカのブルキナファソなど現場を歩いて浮かび上がったタックスヘイブンの実態、日本の大企業の関わりを示す新たな取材成果など、さらなる税逃れの闇を描く。池上彰氏が解説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
95
「パラダイス文書」を追求する国際的なジャーナリストのネットワークICIJ。参加した朝日新聞の記者のルポは、取材現場の厳しさとタックスヘイブンの実態を生々しく伝え、飽きさせない。とはいえこれは多分氷山の一角。多くの優秀な人材が知恵を結集して組み上げた「合法的」な仕組みは、簡単には揺るがない。単に「せこい金持ちがズルしてる」といった話ではなく、本来は利益を得るべき人々に利益が届かず、貧富の格差を拡大させている実態。正当なビジネスと悪質な税逃れの境界はどこにあるのか。流行りのESG投資指標も無力だ。2021/01/23
skunk_c
46
パラダイス文書をICIJが一斉に報道していく経過と、その内容に関するルポで、各国のジャーナリストが協力しながら調査報道を仕掛けていく様子が詳しく書かれているのが最も興味深かった。肝心の疑惑内容については、基本的に「合法」の中で行われていることもあり、十分解明されたとはとても言えないけれど、「租税回避」以外にも様々な問題が指摘されている。その中ではブルキナファソのナントウ鉱山に関する章が目を引いた。こうした形を変えた「南北間の収奪」具体事例はなかなか触れる機会がないので、これで1冊ものしてもらいたいくらい。2020/08/27
かんがく
10
タックスヘイブンの法律事務所の内部文書であるパラダイス文書を徹底取材した内容。大企業や政治家が、あらゆる手を使って租税回避をすることで、真面目に納税している国民の負担は増え、アフリカの資源国は発展が出来ず、貧富の格差は広がるということに強い憤りを覚えた。国際的な報道協力についてもテーマとなっていて面白かった。2020/08/12
shomma
7
バミューダ、モーリシャス、ケイマン、マン島…。Havenは避難所、(違法でない)租税回避地を指す。タックスヘイヴンは会社情報全般を秘匿しやすいため、租税回避の他、取引自体や出資元を隠蔽する場合にも用いられている。政治家の資金、著名人の租税回避スキーム、アフリカにおける租税回避、またこれを生業にすり国際的法律事務所の存在。タックスヘイヴンの姿を多面的に描き出して迫力のある一冊だった。国際的に協同した報道のあり方、ネットの時代に調査報道の能力をどう温存するか、といった問題意識まで幅広く書かれている。2020/09/08
蓬
3
厚切りジェイソン風に説明します。 「タックスヘイブンというのは、法人税を納めなくて良い土地。 例えば、Appleが日本でiPhoneを1000個売ったとしたら、売上相応の税金を払わないといけないよね。 ここで魔法のタックスヘイブン…そこにダミーの会社を用意して、iPhoneの売上金を移す。そうすると税金払わなくていい。Apple儲かる。日本は税収減るから、消費税上げたりサービスの質落とさないといけない。……。Why Apple people?!??! 税金払わないせいで俺たち苦しむのオカシイダロ!!」2021/03/28