内容説明
『――私は、夢に届かない』
トラウマにより歌声を失い、プロのソリストの道から脱落した少女・椿。幼い頃から全てを捧げてきた夢を失い、残ったのは空虚感だけ。そんな中、椿はオペラの自主公演を行う“東都大オペラサークル”の指揮者・黒田と出会い……。
才能を持たざる人間の、夢と現実。歌声を失った歌姫と、孤高の指揮者――希望を見失った二人が紡ぐ、《挫折》と《再生》の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむー
68
軽めのキャラノベルと期待せずに読んでみたら予想外によい出来、掘り出し物でしたよ。『よくできました』。意地悪に見れば“逆“蜂蜜と遠雷というかクセのないのだめといったところではあるけれど、壁を乗り越えて成長してゆくそれらの物語とは違う“乗り越えられない”苦悩が重苦しくなりすぎないように描かれているところに好感触。終盤で主人公・椿が逃げてきたものと向き合うクライマックスも胸に迫る。鬼監督にして料理上手な“お母さん”な黒田をはじめ、脇役が濃すぎない程度に個性が立っているのも含めて全体にバランスがよいですね。2018/05/29
あおでん@やさどく管理人
43
生きるのに不器用な人が出てくる物語が好きだ。挫折もすぐには乗り越えられないし、うまく生きている人と比べて生きづらさを感じてしまうこともある。それでも、「自分はどうしたいか」「自分は何が楽しいか」を考えて、不器用なりに自分の幸せに向かって歩き出す。悲しさ、苦しさ、そして楽しさ。全てが詰まっているオペラは、不器用な人たちの人生に重なるのかもしれない。2018/05/31
よっち
18
トラウマにより歌声を失い、プロのソリストの道から脱落した少女・椿。そんな中、椿はオペラの自主公演を行う東都大オペラサークルの指揮者・黒田と出会う挫折と再生の物語。幼い頃から全てを捧げてきた夢を失い、残ったのは空虚感だけ。歌いたいけれど歌えなくなってしまった椿、一方で努力が確実に実を結んでゆく友人との何とも複雑な関係。才能を持たざる人間の夢に突きつけられた現実、そして歌声を失った歌姫と孤高の指揮者の出会いによって変わる様々な思いもあったりで、彼女の再起を見守る気持ちで読めるとても素敵な物語になっていました。2018/03/25
なま
13
★4 トラウマにより歌えなくなった椿。音大声楽科を退学し、新たな大学に入り直すが、新歓日にフィガロの曲に引き寄せられオペラサークルに出会う。歌いたいけど歌えない思い。努力すればしただけの評価がある友人との関係。努力しても苦労しても、その先が得られないと知った時。「自分は一握りの特別な誰かではないと気づいてしまった時。その時、人はどうやって・・次の一歩を踏み出せば良いのだろう」p204 YAなのにオペラやクラッシック曲も多彩。著者がアマチュアオペラ経験者だからこそ伝わる青春小説。初恋の要素もたまらない。2022/04/16
優
11
登録し忘れ。私は好きな話でした。本当は好きなことでも、辛いことがあると、嫌いになってしまう。私も一回そういうことがありました。私はバスケやめたんですけど、やめた後はやっぱり、好きで、でも怖くて。いまだに、抜け出せないけど、この本には少し勇気をもらえた。