内容説明
成功の果てにある地獄じみた世界、奇跡のような輝き、静かな悲哀──映画はいつも私たちに思いもかけぬものを届ける。朝日新聞で15年続いた、映画評からはじまる名エッセイ二分冊のうちの一冊。1999~2007年までの前半90篇を収載。連載担当記者による解説入り。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
69
七年と少しの新聞連載による映画紹介。だがそこは作家沢木さんなのでだだの映画紹介ではない、その映画の最良部分のムードを上手く伝えていて見てみたい気にさせてくれるそんな本です。ヴィム・ベンダースの『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』、フアン・カルロス・タビオの『バスを待ちながら』、ロルフ・シューベル『暗い日曜日』などが興味深い。2019/07/04
DEE
12
「銀の街から」に続く沢木耕太郎による映画評。 読んで実際に観たくなる作品もあれば、この評を読むだけで観たような気にさせてくれる作品もある。とてもお得 笑 ストーリーに立ち入り過ぎず、かつ読者に観たいと思わせる際どい綱渡りのような文章と本人も言っているが、その意図は充分に成功していると思う。っていうか、こんなレビューよく書けるよなと感心することしきりだった。2019/07/03
まさ☆( ^ω^ )♬
8
この本で紹介されている映画達、この時期は殆ど映画を観て無いのでとても参考になった。機会があれば観たい映画ばかりだ。沢木さんの文章が好きなので、尚更観たくなる。永久保存の一冊です。2020/03/27
Inzaghico (Etsuko Oshita)
8
びっくりしたのが『ロスト・イン・トランスレーション』の評だ。抑えた筆致なのだが、完全に怒っている。最初から最後まで、冷静ながらもコテンパンだ。この映画評につけられたタイトルも「愚かさに気づかない愚かさ」と手厳しい。「自分が理解できないのは相手がわるいからだ」という思い込みが中東の出来事の原因ではないか、とまで言っている。ソフィア・コッポラのこの作品を観ようと思ってまだ観ていないのだが、天の邪鬼なわたしはよけい観たくなった。2018/05/28
水の都
4
朝日新聞映画コラムを愛読してた。日韓WCの記事も心ゆらめくほど良かったが、この映画批評も清々しい。日本語の哀愁を帯びた美しさに満たされる読書時間。2020/12/22