内容説明
2018年の全人代において、中国国家主席の任期である「2期10年」が撤廃される。
その意味について、彼の国にいま「新しい皇帝」が誕生しようとしている、と石氏はいう。
なぜ21世紀に入り、世界が民主化へ向かっているにもかかわらず、中国は「皇帝政治」に戻るのか?
始皇帝の時代から近現代史までを一気に通観しながら、つねに「皇帝」という存在を求める中国の社会通念と、そこから生まれる歴史の「法則」を明らかにしつつ、「新しい皇帝政治」が日本と東アジアに与える強烈なインパクトを読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
83
「皇帝政治」とセットで紹介される「中華思想」。一言で表現すれば「かなりおせっかい」(著者は「独り善がり」と表現)。この本を読むと中国政府が新疆ウイグル自治区・チベット自治区・香港で強権的な行動に出るのかよく理解できる。中国政府の政策は日本にとって決して対岸の火事ではない。現に中国政府は海洋進出の軍事構想として日本に迫る「第一列島線・第二列島線」という概念を持ち続けている。「東夷」の一人にすぎない日本人としてどうすれば良いのか分からないが、ただ各地域で続いている抗争の顛末は見守っていた方が良いと思う。2019/10/19
犬養三千代
6
中国の歴史を紐解きながら「皇帝政治」の期間と混乱期を解説。利害関係の柵封体制。琉球処分から始まる清国の混迷と滅亡。琉球処分以前にもどすのが習近平の野望であり皇帝化の完成形と解く。 わかり易い中国史。2019/11/05
紗窓ともえ
6
チャイナの歴史が、統一王朝と反乱・易姓革命の繰り返しとは言われていますが、皇帝を求める歴史的理由の分析が新しい視点に感じました。終身主席の誕生で歴史の循環に踏み出したとすると、日本は大変に危険な状況に入り出したことに…反日議員なんか選んでいる場合じゃないですね。2018/04/19
Hatann
3
中国で民主化が進まない一因として、中国社会に存在する皇帝を求めるエートス、そのエートスを背景とする中国の歴史の法則を明らかにしようとする。しかし、聡明なリーダーを望む国民意識は中国特有ではないし、トップが短期にコロコロ変わる体制が適切だとは思えない。現在の中国の国内的な課題は、格差の是正であり、腐敗の撲滅である。著者は習近平が民主化推進により毛沢東・鄧小平に匹敵する実績をあげるチャンスがあったというが、現時点で民主化が導入されても、格差が固定化されるか、極端な是正策のもとに社会基盤が崩壊するだけに思える。2018/04/19
MrSeiuchi
2
「中国は独裁でしか治まらない」のではなく「中国人は皇帝による独裁を望んでいる」と懇切丁寧に説明し、習近平の皇帝化もまた中国人の願望によるものとする。 著者の諦観が悲しい。2018/08/06