内容説明
日本人のピアニスト像を決定づけた中村紘子。華やかに輝き続けたピアノの女王は、2016年7月、惜しまれつつ世を去ったのちも圧倒的存在感を放っている。戦後復興を目指すなか最高峰の音楽教育を受け、高度経済成長、空前のピアノブームなど日本の熱いうねりとパラレルに弧を描く人生。賢く、屹立する覚悟をもち、キュートでお茶目、度胸ある美しいひとだった。その生涯と音楽をたどる。当代きっての音楽家たち、調律師、マネージャー、コンクール界のレジェンドなどゆかりの人々によるオン&オフステージの貴重な証言が集まった。頂点を極めた一人の女性の生きかたは、力強く厳しい、愛に満ちたエールである。 【目次】序/第1章 中村紘子のキャリア確立/第2章 時代の流れとともに特別な存在となっていった中村紘子/第3章 中村紘子の音楽/第4章 ピアノ界を牽引、指導する立場となった中村紘子/第5章 中村紘子が育てた日本のピアノ界と今後/おわりに/あとがき/参考文献
目次
【目次】序
第1章 中村紘子のキャリア確立
第2章 時代の流れとともに特別な存在となっていった中村紘子
第3章 中村紘子の音楽
第4章 ピアノ界を牽引、指導する立場となった中村紘子
第5章 中村紘子が育てた日本のピアノ界と今後
おわりに
あとがき
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Isamash
26
2018年発行の元「ショパン」の編集者の音楽ライター・高坂はる香著作。名前だけは知っていたピアニスト中村紘子を少し距離を置いた冷静な調査で描いていて好感を覚えた。3歳からピアノを学び、日本のピアニストのエリートコース桐朋女子高に入学しながら退学しジュリアード音学院に行ったことや、そこで師匠井口愛子に教え込まれた指を立てて上から叩く日本流弾き方を全否定されたのは知らなかった。中村はその経験から弟子の個性を考慮せず型にはめようとする日本の教育に批判的であった様。ただピアノ界に留まらず、この教育法はまだ根強いか2023/04/11
カタコッタ
16
私にとって日本人ピアニストは中村紘子なのです。実に良く書かれております。ピアノばかりでなくエッセイも面白いものでした。お茶目な所もあり、左手でピアノ、右手で卵を割るところからスクランブルエッグを作られたのを私は番組を観ており、ますますピアニスト中村紘子が好きになったのでした。この楽しいエピソードは有名なのでしょうか、この本に詳しく書かれています。お振袖を着て海外のステージに立った中村紘子さん、さぞかし可愛らしかったでしょうね。カーリーヘアもキュート。ドレスから見えた背中の筋肉の逞しさ!また聴いてみます。2023/10/11
Totchang
14
1960年10月19日イギリスBBCスタジオ収録、16歳の演奏という動画をYOUTUBEで見ることができます。この評伝、とても読みやすく偉大なピアニストの姿をあまねく描いているのではないでしょうか。ご本人の著書は読ませていただいておりますが、このように客観的にあちこちに書かれたものを集め、関係者の話を聞いた事によって描かれた中村紘子の姿はまた違った形で彼女の偉業を思い出させます。海野さんと堤さんにとよるピアノトリオ、棚から出して改めて聴いております。2021/02/11
shushu
10
2年程前に亡くなったピアニスト中村紘子の評伝。小澤征爾とこの人はクラシック音楽家でも別格の知名度がある気がする。敗戦後復興していく日本と重なるような軌跡を感じるからだろう。桐朋の子ども向け音楽教室で学び始め、N響の海外ツアーに同行、欧米に留学し、海外の著名コンクールに入賞、日本を起点に演奏活動を行いながら、海外コンクールの審査員だけではなく日本のコンクール開催の運営にも携わる。日本の音楽界を背負う気概が感じられるその人生がまとめられている。中村さんのエッセイ集を読み返したくなった。2018/09/13
trazom
10
日本音楽界のレジェンドである中村紘子先生ですが、この本は、提灯持ちのような賞賛一辺倒ではなく、中村先生を、教育者、コンクール審査員、音楽の普及者、文筆家などの多面的な側面からとらえ、批判を含めて極めてフェアな視点で描いています。強い使命感を背負い、超人的な活動で生き抜いてこられた中村先生の人生が、そこにあります。主人公も、筆者も、ともに素敵な女性に違いないと感動する読後感です。2018/03/27