講談社文芸文庫<br> 西南役伝説

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講談社文芸文庫
西南役伝説

  • 著者名:石牟礼道子【著】
  • 価格 ¥1,881(本体¥1,710)
  • 講談社(2018/03発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062903714

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内容説明

御一新から十年、下野した西郷隆盛のもとに集結した士族たちが決起した西南戦争。その戦場となった九州の中南部で当時の噂や風説を知る古老たちの生の声に耳を傾け、支配権力の伝える歴史からは見えてこない庶民のしたたかな眼差しと文化を浮き彫りにする。百年というスケールでこの国の「根」の在処を探った、名作『苦海浄土』につらなる石牟礼文学の代表作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

332
水俣、天草、北薩の御一新前と後を描く。いくつもの史料を駆使して洗い出してゆくのだが、そうした地に生きた農民たちの、これまであまり語られてくることがなかった姿を、石牟礼は自らの感性に一度それらを濾過させることで語り直し、再生させる。それが一般の歴史書とのもっとも大きな違いだろう。西南戦争も、日清、日露の戦争も、第一次・第二次大戦も、この地にあっては遠くて近い戦争であった。そして、そうした歴史の狭間で、切支丹の村の家族全員が殺され、また天草郡では「弘化年度打毀乱妨件」があり、農民の間に獄門、遠島の犠牲者が⇒2024/02/06

chanvesa

30
「たぶん御一新というのは、このような人々にとって、歴史の動く時のどさくさだったのでしょう。(60頁)」この言葉の背景にある石牟礼さんの視座は歴史を俯瞰で眺めていると思う。近代の始まりは輝かしさよりも、自然に根ざして暮らす人々を、囲い込み追い立てる権力の所業が鮮明化した。「いくら世が替っても、お上ちゅうもんは下々について呉れるもんじゃなか(40頁)」は批判ではなく、嘆息なのだ。地に足の付いた生活する人々の倫理観。「世の中は、俺共俺共と、わが事ばっかり言うようでは済まんど。(86頁)」の慎み深さ。2022/12/17

毒兎真暗ミサ【副長】

27
幕末の西郷戦争、第一次二次世界大戦、様々な戦争に巻き込まれた薩摩、天草、水俣を生きた語り手たちの声を、著者が掬い上げた本書。理不尽な被害に耐え、心には思い思いの悔しさを隠し。かすかな幸せに火を灯しながら生きてきた悲痛の叫びがここには在る。この時代の小さな声達に命を吹き込む著者と出版社。掬って書いて、刷って広めて。救いへの循環に望みを架けた、その情熱が伝わる。その炎こそが【生きる】ことだと。様々な人たちの想いを乗せた、形を成したシュプレヒコールよ。無視できないまでに、未来を劈け。2024/02/10

fseigojp

25
日本のフォークナーは彼女かもしれない 土俗的怨念の描き方がすさまじい これに滑稽味を入れると深沢七朗か2018/08/18

yuki

10
不思議な本でした。歴史上の勇者ではなく、歴史にほんろうされた名もなき人々…「目に一丁字もない人間」…の語る物語から歴史が浮かび上がってきました。「苦海浄土」の権力へのまなざしの厳しさと名もなき人々への優しさがわかります。2019/05/06

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