ハウスキーピング

個数:1
紙書籍版価格
¥2,640
  • 電子書籍
  • Reader

ハウスキーピング

  • ISBN:9784309207384

ファイル: /

内容説明

両親のいない姉妹と、放浪生活を営んできた奔放な叔母との奇妙な三人暮らし。拠り所となる家(ハウス)の喪失の悲しみを詩情豊かにつづる、ピュリツァー賞・全米批評家賞作家のデビュー作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ミカママ

314
【原書】文章はリズミックなのに読了までに時間がかかったのは、作者の表現が詩的すぎるからか。舞台となる湖(広大・深淵=戦時中は海軍が潜水艦の実験に使っていた)を知っていたのは、利点であった。鉄橋の上を歩くふたりを思い浮かべて、脚が震えたほど。設定は四季に渡っているのに、冬の肌を突き刺すような寒さと暗さだけがひしひしと伝わってくる。物語中「家」は安定、「湖」は喪失、「鉄道」は逃亡を表すメタファーなのだろう。受賞作も(難しそうだが)読んでみることにする。2018/07/02

ケイ

131
夫が建てた家から離れず家を守る女は、娘達が大人しいことで問題に気付かなかった。湖の横で暮らすから常に向き合わされるのだ 「失えば、姿が消えた後でその人が驚くほど特別なものになってしまうのに」 1人は鉄道のつながらない所へ、1人は連れ去る人を見つけ、1人は置いていかれ、結局鉄道に乗り続ける。線路を歩くのは、下に何かないか目をこらすため、きっと。孫二人は、祖父も母も奪われたそばで暮らす。「家はとっておきなさい。頭の上に屋根がある限りはまず安泰なんだから」 そう、シルヴィアは知らずと呪いをかけたのだ、そう思う。2018/05/09

ケイ

109
読書会に再読。登場人物たちより、私自身が湖と夜の鉄橋の怖さに打ち勝てず。それらを前に足がすくむ。自分の寛容力が実はとても低いのだということも思い知らされた。2018/06/26

藤月はな(灯れ松明の火)

85
二人っきりで祖母の家に遺されたルースとルーシル。家を維持(ハウスキーピング)しながら家を守ってきた女達。やがて渡り者であろうシルヴィとの暮らしが始まるが・・・。薄氷の張った湖の水面のような文章で自殺、ネグレクト、不和などの心を殴りつけるような事が描かれているので余計に辛い。浮き草のように安定しない叔母との生活ははっきり、言うとマトモじゃない。そんな彼女達と自ら、分かたれたルーシルは恐らく、正しい。だが私は現実に目を背けているだけだとしても心地よい居場所があり、自由なシルヴィとルースに眩しさを覚えてしまう。2018/04/12

nobi

70
湖の近くに住み、世間との接点はわずか、学校に行かない、誰かの死から始まるという設定は「ザリガニの鳴くところ(D.オーエンス)」と似ている。なのに湖にボートで漕ぎ出すその開放感は、この物語では死後の世界への旅立ちの如き閉塞感に変わる。寄り添ってくる猫もカモメもここにはいない。身近な人が忽然と姿を消す、と、ありふれた日常と非日常の境は不確かになり、喜びを封印させられたような日々が続く。哲学的言辞は屈折している。重苦しさから読み続けるのを断念しようかと思った程。でもメモした気になる頁番号が増えていったのが意外。2022/05/13

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/12627631
  • ご注意事項