内容説明
大正時代に極貧の生活を赤裸々に描いた長篇小説『根津權現裏』が賞賛されながら、無頼ゆえに非業の死を遂げた藤澤清造。その生き方に相通じるものを感じ、歿後弟子を名乗って全集刊行を心に誓いつつ、一緒に暮らす女に暴力を振るう男の、捨て身とひらき直りの日々。平成の世に突如現れた純粋無垢の私小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
122
発表時期は前後するものの、並べて読めばひと繋がりになる三つの短編からなる西村堅太の最初の短編集。 私小説。作家、藤澤清造に傾倒するあまりのマニアックな収集癖に関する部分はえらく退屈であるが、同居する女性との生活に話が及ぶと俄然、面白くなる。この男、ろくでなし。すぐに怒って女性を殴る、蹴る。女性が逃げ出すと「二度としません」などと泣いて謝り、戻って来るとじきにまた平手打ちし髪の毛つかんで椅子ごと引き倒し殴る蹴る。酷い話なのに、何でこんなに面白いんだろう。勿論俺は、妻に手を上げた事など一度もないのに。 2023/06/12
ナマアタタカイカタタタキキ
82
まずタイトルの軽妙さに惹かれた。何んのその/どうで死ぬ身の/一踊り、とは、著者が偏愛する藤澤淸造の一句だそう。直向きに藤澤氏を追い求める彼も、つまらぬことで女に暴行を加える彼も、同じ一人の人間であることはやはり興味深い。そして一線を画す語彙力。ここまで自分を曝け出すと、一体どういう心持になるのだろうか。彼の私小説はこれまでに何冊か読んだが、噴飯物の逸話(私の身の回りで実際に起こっているとしたらちょっと笑えないが)の数々を経て、やはり女側も女側なのだということを思わされる。読後に残った言葉は“愛憎”だった。2021/09/04
抹茶モナカ
51
西村賢太の私小説は、自分の愚かさを変奏して繰り返される。藤澤清造の没後弟子を自任して、全集の編集を準備している間の出来事を描いた3作が収録されていて、主人公の愚かな過ちや心の弱さを描き出す。文筆家になっているだけで、トラブルを抱えていても、僕なんかよりマトモな人で、青くさい文学青年趣味を生業にまで高めたのだから、大したもので、羨ましい。警察沙汰こそ起こしていないけど、僕は努力しても人並み以下で。2017/01/01
たくろうそっくりおじさん・寺
42
まず表紙の絵が素晴らしい。中身は共感できない部分もあるのに、ぐんぐん読ませる。やはり面白いとしか言えない。これもまた間違いなく男の典型だ。2011/04/27
神太郎
38
久々に読んだ西村賢太作品ですが、やはり、主人公が直情的なくず。私は藤澤清造に傾倒し、全集を夢見ているのは良いのだが、その為に金は散財するし、ときには彼女に暴力振るってしまう始末。しかし、女がいなくなると途端にすがりついていく……無頼漢なんだか、なんなんだか……。兎に角目も当てられない。余裕がないはずなのに、変に達観してる。なのに怒ると手を出したり、現状を引っ掻き回してしまう。そして、小心でもある。リアルな生きざまが面白く、不快でもあり、変な緊張感を生む。本当に西村さんの作品はギラギラとしたものを感じる。2020/11/16
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