内容説明
瀬戸内寂聴、吉村昭、河野多惠子、津村節子、新田次郎ら錚々たる作家を輩出した同人誌『文学者』を主宰し、文壇の大御所として絶大な人気を博していた昭和二十年代後半、『文學界』に連載され、異例の反響を得た名著。人物の描き方から時間の処理法、題の付け方、あとがきの意義、執筆時に適した飲料まで。自身の作品を例に、懇切丁寧、裏の裏まで教え諭した究極の小説指南書。
目次
第一章 小説覚書
第二章 テーマに就いて
第三章 プロット(構成)に就いて
第四章 人物描写
第五章 環境に就いて
第六章 描写と説明
第七章 小説の形式
第八章 リアリティに就いて
第九章 文章に就いて
第十章 時間の処理
第十一章 題名のつけ方に就いて
第十二章 あとがきの意義
第十三章 小説の書出しと結びに就いて
第十四章 小説片手落論
第十五章 初心者の心得
第十六章 結論
女靴(参考作品)
媒体(参考作品)
あとがき
解説 青木淳悟
年譜 中島国彦
著書目録 中島国彦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yakmy
1
「己を完膚なく俎上にのせるということは、むつかしいことである。が、作家はつねに裸になっている覚悟がなければならないのだ。」 昭和の文士、といった古風で端正な人柄がパッと浮かんだけど、よくよく考えたらそんなこともないのかもしれない。 「小説を書く以外に、私には他に、どうしようもなかった。小説を書かずにはいられない私である」p210 テクニックみたいな、著者自身が創作について考えることは書かれてあるが、ただの参考にとどめるように著者は繰り返す。万人に当てはまる作法などない、と。見つけるしかないんだ、と。 2019/09/15
でろり~ん
1
もう六十年以上前の本。随分と評判になったらしい。名前は知っていましたが、この人の作品は、この本の参考作品で初めて読みました。つまらない。実に正直に小説を書く過程について記していて、参考作品までも併用しているその確固たる自信には畏れ入ります。開き直りなのかもしれませんけれど。理論的に古くはないように感じましたが、ディテールに潜んでいる時代性が、どうしようもなく引っ掛かりました。ただ、モチーフ、テーマ、プロットについてハッキリとした定義を展開していることは見事でした。解説が、???でした。2019/02/01