内容説明
山に登り、自然の中に身を置くことで、自らとの対話を続けた思索家の、山エッセイ・ベストセレクション。「何故人は山へ登るのだろう」という問いかけに始まり、山行きの持ち物から記憶に残る思い出の山々、詩篇まで、四十六篇を収録。『山歩きの愉しみ』改題。〈編・解説〉高丘卓
【目次】
I小前奏曲
孤独な洗礼
II 身支度
輪かんじき
道具
バドミントン・スタイル
時計と高度計
手帖
画帖
絵具
地図
乗車券
歩き方初歩
夏の山で気をつけること
山の灯
下山術
登山者と山の本
III 山想
春蘭
光と水の戯れ
波
霙の降る林
高原の夕映え
暁の星
山と老人
IV 山の博物誌
山の博物手帖
山に棲む虫
冬の手帖
春の手帖
夏の手帖
秋の手帖
岩上の想い
雪崩の音
山上の初光
静かな流れのほとり
V 心の山
上高地の今昔
小海線の車窓
上信越の山と峠
鳥海山
和山の宿
雨飾山
穴あき沢
関東の山々
北海道の山
北穂高岳
小黒部谷遡行剣岳
意地の悪い山案内
VI 詩篇
山頂
氷の岩峰
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gonta19
107
2018/2/10 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。 2020/11/5〜11/6 思索家としても著名な串田氏の山に関するエッセイなど。昔の山の様子が分かって興味深かった。2020/11/06
Shoji
61
自然を愛し、山を愛する作者のエッセイ。名だたる日本の山の感想、道具にまつわる話、山をどうスケッチするか、山の歩き方、観光開発に関する警鐘、四季折々の山の姿、などなど、豊かな大自然に逆うことなく自然体で山に接している作者の姿が浮かびました。いい文章が綴られていました。2018/04/04
HANA
59
山に関する随想集。「我々は何故山に登るのか」という問いから始まり、愛着のある道具類の数々、山道を行く途中での風景やそれを彩る季節や動植物、信州や関東、北海道の思い出の山々等を語って止む事がない。それが独特の透明感のある文体で記されているので、読みながら暖かくなりつつある日差しの中を歩く春の山道や、木々を揺らし落ち葉を巻き上げる秋風の中を歩く心地が思い出さされる。いいなあ、やはりこういう本を読むと山に行きたくてたまらなくなるなあ。読みながら今までの山行と登りたい山への渇望が沸き上がる、いい一冊であった。2018/03/24
くみ
22
【雪の日に】小島聖さんのエッセイで知った串田さん。登山家の方なんだろうと思ってたら本業はフランス哲学。そして想像以上の登山家でした。雪山はもちろん、必要があれば野宿も、また夜通しの峠越えも辞さない。その紡がれる言葉は静けさと威厳があり父性を感じました。同時にとても詩的なロマンチシズムも感じます。呼んでいるととても安らぐ。後半は実際に山に登る方のためのエッセイが多く愛好家の方はより楽しめるかも。最後が詩でしめくくられてるのも余韻が残ります。2019/02/02
あきあかね
20
気品ある詩情に満ち、かつ思索的で、著者の山への愛情が感じられる一冊。 深田久弥の名著『日本百名山』が、具体の山を取り上げ、山が詠まれた和歌や歴史などを織り交ぜるのに対し、本書で現れる山々の多くは、具体の名前は示されない。 それによって、読み手は自身がこれまでに登った、心の山の想い出を自由に投影できる。夏山の草いきれと壮麗な夕映え、晩秋の山で出会した清冽な泉、冴え冴えとした月の輝きと雪の匂い、白樺の樹皮にそっと羽を休める春の蝶ー。見本帳のようにあふれる、四季折々の山の魅力によって、想像が広がってゆく。⇒2019/05/18