内容説明
三層に分かれた折りたたみ式の北京を描いた表題作、中国に史上初のヒューゴー賞をもたらした「円」など7作家の13作品を、『紙の動物園』著者のケン・リュウが選び収録。いま一番SFが熱い国・中国の粋を集めたアンソロジー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
152
表題作は階級により三層に折りたたまれる未来都市で、《疲労と空腹を抱えた》人々が折りたたみを美しく見あげるシーンが印象的。金のため危険を冒して恋文を届けた男は嘘の恋の仲立ちをしたことを嫌悪するが、三層のできた政治的理由を聞かされても冷たい《運命の輪郭》をぼんやりと感じるだけで、家に帰り着けばそんな冷たさや、命を脅かされた事さえ忘れてしまう。この男の幸せって何だろうと考えさせられた。始皇帝の兵士三百万に黒白の旗を持たせ円周率を求める話や、他にも0と1で構成される不思議な話が幾つかあり、易経の国だなあと思った。2018/05/12
Panzer Leader
100
SF短編の雄ケン・リュウが厳選した中国人作家7人13篇の傑作群!西洋SFって「一体どこの話?」と距離感を感じることが多いが、この作品集は情緒的というか身近に感じられるのは同じ東洋人であるせいか。特に劉慈欣(リウ・ツーシン)の「円」「神様の介護係」が自分にとってツボ。「三体」読んでみたいなと思ったらグッドタイミングで7月に刊行予定で、思わずポチッ。2019/05/31
R
97
SFを堪能できた、そんな気持ちで読み終えられた一冊でした。中国の様々な作家の短編を読める一遍だったのだけども、その着想や想像力が、贔屓目なのか、東洋のそれだから理解できるし、その発展の仕方がとても面白いと満足できた。根底にある政治体制や、平和への思いというものも見えるのだけど、それを度外視にして、単純にSF作品として面白いということに魅力を感じた。特に秦の軍隊を使って計算機を再現するという歴史if話が凄く好きで、SFかくあるべしと思って、満足な読書をしました。2018/12/04
ケンケン
83
(558冊目)ケン・リュウが選んだ作品集という事で購入。また気になる作家さんが開拓できたっと、まず一言お礼を申し上げたい。気に入ったのは、<沙嘴の花/陳楸帆、 百鬼夜行街/夏笳、童童の夏/夏笳、沈黙都市/馬伯庸 、見えない惑星/郝景芳、折りたたみ北京/郝景芳、円/劉慈欣 神様の介護係/劉慈欣> 思っていたSFよりも、優しさ・物悲しさが滲み出る作品が多かったように思う。2018/03/12
sin
82
天安門以降の海外からの視線にも拘わらず…中国と云えばアニメの登場人物“プーさん?ジャイアン?”になぞらえることをインターネット上で規制したり、憲法改変を以て独裁政治の始まりを予感させる国家主席の存在に危惧を覚えずにはいられないのだが…編者はそうした偏狭な見方に陥らずグローバルな視点で描かれた作品の本質を感じとる様にと示唆される。だがしかし善かれ悪しかれここに現代並びに近未来の中国を予見しないでおくことは難しい!編者のあるいは作者のグローバルと云う矜持は現状を傍観せざるを得ない彼らの希望的観測なのだろうか?2018/03/28