内容説明
北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐって緊迫化する日本の安全保障。なぜヨーロッパでは30年も前に消滅した「冷戦構造」が東アジアではいまだに続いているのか……。本書は、その根源が67年前の「朝鮮戦争」にあることを明らかにし、対米関係では日本と双子のような関係にある韓国の軍事的状況から、これまであまり論じられてこなかった朝鮮戦争と日本の安全保障体制の関係についてときほぐし、進むべき日本の未来を展望する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
32
ハルバースタムの「ザ・コールデスト・ウィンター」は朝鮮戦争を米中ソ三ヶ国の代理戦争ととらえ、人物ドラマとして巧みに描いていました。本著はそうではなく、韓国、北朝鮮の立場をより重視してあの戦争を分析した上で、これから起こり得るべきシナリオを想定しています。国連軍としていつでも戦争できる選択肢を持つ米国。さらには韓国軍の指揮権も持っていること。第2次朝鮮戦争が起きれば、日本の米軍もとい国連軍基地は重要な活動拠点となること。われわれ日本人が知っておかなくてはいけないことが満載の良書です。筆者は東京新聞論説委員。2018/02/17
Porco
23
朝鮮戦争が今の日本に、制度的にどう関係しているのかが知れます。対岸の火事ではないことがよくわかりました。2018/07/30
那由田 忠
20
国連で北の侵略が平和の破壊とされて国連軍が派遣されるも、これは今で言う多国籍軍。休戦となっているだけで、侵略国が制裁を受けてはいない。著者は侵略と認めているものの、「国連司令部があることでアメリカはいつでも戦争を始められる」と書く。プエブロ号事件とポプラ伐採事件を並べるものの、青瓦台襲撃未遂事件などの北の侵略行為やソウルに向けられた軍事施設などについて全く述べない。朝鮮戦争を終わらせるには、アメリカの国連軍解体こそが必要で、北の軍事力はまるで問題ないみたい。国連軍は戦争を起すためにいるみたいだ(笑)2018/06/10
coolflat
20
朝鮮戦争では米国を中心に国連軍(朝鮮国連軍)が結成され、北朝鮮軍及び中国人民義勇軍と戦ったが、この国連軍の中枢である「国連軍司令部」は、今も韓国にあって現実に機能している。そして、東京にある米軍横田基地には、国連軍後方司令部と呼ばれる部署があり、日本国内にある七つの米軍基地が国連軍基地に指定されている。なお、現在国連軍基地に指定されているのは、横田基地(東京)、キャンプ座間(神奈川)、横須賀基地(神奈川)、佐世保基地(長崎)、嘉手納基地(沖縄)、普天間基地(沖縄)、ホワイトビーチ(沖縄)である。2018/06/07
BLACK無糖好き
17
朝鮮戦争が休戦状態にある現在、アメリカを中心とした「国連軍司令部」は韓国にあって現実に機能している。北朝鮮が休戦協定に違反していると考えられる場合、「国連軍」は新たな安保理決議の手続きをとらなくても朝鮮半島で戦争を引き起こす事ができる。その際、日本にある米軍基地は「国連軍地位協定」によって後方支援基地として使用される事になっている、という事実を明確にした点が本書の特長。一方で、金正男の運命を身近で見てきた著者にしては、本書の最終章で北に対する楽観的な見方が散見される所は些か気になる。2018/03/02