山と溪谷社 未完の巡礼 －冒険者たちへのオマージュ

著者名：神長幹雄

山と溪谷社（2018/03発売）

• ISBN：9784635178228

内容説明

1980年代から90年代の半ばにかけて、極地の冒険やヒマラヤ登山が隆盛を極めたころ、
何人もの登山家や冒険家たちが突然の事故で命を失ってしまった。
そうしたなかで直接会って話を聞くことができた、忘れがたい冒険者たちがいる。
植村直己、長谷川恒男、星野道夫、山田昇、河野兵市、小西政継の6人の人たちだ。
生前の交流や山と溪谷社との関わりなどを中心に、6人の事績を顕彰して綴られた邂逅の記録である。

時代が経過するなかで、現地を訪ねてその足跡を辿ってみる――。
世界的な極地冒険家・植村直己は、グリーンランド、シオラパルクへの旅を、
アルプスやヒマラヤで記録を残した、登山家・長谷川恒男は、カラコルム、フンザへの旅を、
動物写真家・星野道夫は、アラスカ、シシュマレフへの旅を、
世界最強と言われた登山家・山田昇は、アラスカ、マッキンリーへの旅を、
北極点に単独徒歩到達した冒険家・河野兵市は、故郷である愛媛県・瀬戸町への旅を、
そして登山を世界レベルに主動した登山家・小西政継は、ネパール、マナスルBCへの旅を
トレースする。
それは、「巡礼」にも似た旅だった。

偶然ではあろうが、6人のうち4人までが43歳で亡くなっている。
彼らが活躍できた時代とはどういう時代だったのか、
志半ばでヒマラヤや極地に逝った、
6人の事績を現地に訪ねて綴られた彼らとの交流の記録である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

[pohcho]

雑誌「山と渓谷」の編集者だった著者が、６人の冒険者たちとの思い出やその足跡をたどった旅について綴っている。 知っているのは２人だけだったが、冒険者たちの人生について興味深く読んだ。凍傷で指を失ってもあきらめずに山に登り続け、ある日突然雪山で遭難して命をなくす。正直そこまでして冒険する気持ちは理解しがたいのだけれど、彼らの姿はとても魅力的だと思う。

2018/05/11

[hiro]

ヤマケイ（山と渓谷社）の編集者が6人の冒険家との交流を綴った記録。植村直己、長谷川恒男、星野道夫、山田昇、河野兵市、小西政継といった錚々たる冒険家を編集者という視点から綴った本書は、彼らの一ファン的な視点が含まれ、親近感わく内容でありつつ、新たに知る一面もあり、なかなかおもしろい。しかし、みな志半ばで遭難していることが本当に残念だ。そして6人中4人が43歳で亡くなっているのだ。植村直己が、長谷川恒男が、、、、生きていたら、きっとまた登山界に違った影響を与えていたに違いない。

2019/03/03

[ケニオミ]

冒険は死と背中併せである。冒険における一つの成功は、次の難易度の高い冒険につながる。しかし、冒険が成功するには運が必要である。次第に難易度を上げながら、数をこなしていくと、いつかは運に見放される時が来る。冒険者にとって死は勲章の一つかもしれないが、遺される人の身になって、体力が落ちてきたらきっぱり冒険は諦めよう。本書で取り上げられた冒険者のほとんどが40歳代で命を落としているのだから。

2018/04/04

[おちあい@ami]

著名な登山家、冒険家の生涯と、その死後、ゆかりの地を訪問する著者の実話。 植村直己、長谷川恒男、星野道夫、山田昇など、最強の登山家、冒険家と言われていた彼ら、遭難することは負けだと信じ、命を粗末にしなかった彼らが、なぜ、山で次々亡くなってしまうのだろうとずっと疑問でしたが、彼らにとって、極限と戦い続けることが生きることを意味し、そうした戦いを続ければ、いつかは負ける日も来ることを、わかっていたのだろうと思った。それにしても、植村直己、長谷川恒男、星野道夫が43歳、山田昇は39歳とは、早すぎる死だと思う。

2018/07/25

[こっこ]

★★★☆☆　図書館本。著者は山岳誌『山と渓谷』の編集者。遭難のため志し半ばで逝った6人の冒険者たちを巡るエッセイ集。一冊で6人もの冒険者を俎上に載せると、一人ひとりの輪郭がようやく見えてきたところで次の人物に移ってしまい、その点不満を感じた。もう少し人数を絞って中身を濃くしても良かったのではないだろうか。また著者のセンチメンタル・ジャーニーの部分は正直不要だったのではと思ってしまった。印象に残ったのは植村直巳氏と河野兵市氏。これを切っ掛けに、是非本人の著作も読んでみたい。

2018/06/08