内容説明
家のために働きづめ、その挙句倒れて死んでしまった大切な父。その時母は浮気相手と不義密通を働いていた――。おしのが母をなじると、返ってきたのはおどろくべき言葉だった。「おしのちゃん、あなたの本当の父親はほかにいるのよ。」
母の不義を憎み、次々と母や、男たちに復讐を果たしながらも、不浄な血が流れている自身の存在に悩むおしの。最後の復讐相手、自分の本当の父親と直面したおしのがとった驚くべき行動とは――。犯した罪をどうやって償うべきか。サスペンス仕立てで語られる、罪と罰の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まこみや
44
時代小説・犯罪小説の装いだが、むしろ実態は罪と罰についての現代小説として読んだ。テーマは「御定法で罰することができない罪」を法に代わって私的に罰することが許されるのかということである。このことは二つの問いを投げかける。①社会的正義の実現に私的復讐は許されるのか、それもまた罪ではないのか。②法で罰せられないとすれば、当人の罪はその人自身で償うべきではないのか、とすれば、何をもって贖罪を果たしたことになるのか。結局おしのは自害する。彼女のした行為の正当性はわからない、しかし悔やんでいる風には見えなかった。2023/08/31
Take@磨穿鉄靴
44
山本周五郎を読むのは初めて。母に対して、そして母と関係した人物の中から「おしの」が許せないと感じた人物に復讐していく、そんなお話。注釈が多くそしてそれを確認しながら進んだのでテンポが悪いまま進む。「あらすじ」まんまの展開で作者が読み手に何を訴えたかったのかよく分からなかった。お父さんがおしのに求めていたことはそんな事だったのかな?そんな訳はないよね。復讐ものはただただ悲しい。幸せって、人間てなんなんだろうね。赦せたら違う世界が見えるだろうけどそんな世界に興味はないか。★★★☆☆2021/05/17
fseigojp
16
これ映画もあるようだ ミネバ2019/07/08
黒豆
10
本作は庶民生活を描いた作品が多い中で、壮絶な復讐劇を描いた異色の作品、最後のやりとりが印象深かった。2018/08/22
ばちゃ
8
商家に婿養子として入り、働きづめてついに死んでしまった最愛の父。病をえた父を放り出し、放蕩三昧の母。父の死後母から聞かされた知りたくなかった事実と父が死に際に言った「どうしてもひと言、(妻に)生きているうちに言っておきたいことがある」という言葉を、娘のおしのは彼女なりに解釈し、復讐に手を染めることになる。彼女の一人語りで話は進み本懐が遂げられるのか本を置くことができない。18歳という若さで知るにはあまりにも暗く、つらい世間や現実。潔癖であるが故に許せないこと。復讐をしながら彼女の中の善や悪が交錯してゆく→2018/06/25
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