内容説明
6世紀末、王朝の興亡が繰り返された中国六朝時代に、一族流浪の困難を乗り越えて、粱、北斉、北周、隋と4代の王朝に仕え、学問を家業とした名門貴族として生を全うした顔之推。彼が子孫のために書き残した『顔氏家訓』は、家族の在り方から子供の教育法、文章論、養生の方法、仕事に臨む姿勢、死をめぐる態度に至るまで、人生のあらゆる局面に役立つ知恵に満ちている。その英知が分かり易い現代語訳で甦る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひよピパパ
6
王朝の興亡が目まぐるしく繰り返された中国六朝時代にあって、たくましく生き抜いた顔之推による子孫あての家訓書。抄本の翻訳ながら本作品のエッセンスが詰まっていて面白い。家族の教育法や文章論、仕事に臨む姿勢など、言及は多岐にわたるが、個人的には、過去の人物や当世の人物および各書物に対する評価、顔之推自身の仏教の理解度がうかがい知れて興味深かった。実に中国古典を読む喜びを実感できた。巻末の顔之推の評伝は、20頁程の短さだが、その一生がドラマチックに描き出されていて圧巻だ。2020/05/03
さとうしん
5
抄訳ながら読みやすく読みどころを押さえたものになっていると思う。語釈・訳注はできるだけ訳文中に盛り込むようにしたとのことだが、別に訳注を付けた方が良かったのではないかと思う部分がちらほら。巻末の評伝は最初に読んだ方がよいだろう。2018/02/13
佐藤丈宗
3
この本が文庫で読めるのはありがたい。語釈がついていない点、物足りなさを感じるかもしれないが、読みやすい現代語訳なので『顔氏家訓』という古典を通読するというのが目的であれば、煩わしい注釈のない本書は十分用に足りるだろう。書名通り「家訓」ではあるが、どちらかというとエッセイのような趣きが強い。ここに描かれた風俗模様、宗教事情、処世訓は興味深いものが多く、南北朝の混乱期を生き抜いた名門貴族が世の中をどのように見ていたかを伺い見ることができて面白い。著者・顔之推は当時としてはかなり開明的な貴族であったと感じた。2018/02/22
dexter4620
2
顔真卿に関する古書を読み、手に取った一冊。本書は顔之推が残した家訓の抄訳。書を読み学びを奨励するのは古今東西変わらない一方で、顔之推は占い等の類にのめり込まないよう忠告する。個人的には勉学編が最も分かりやすく、やる気を奮い立たせてくれる。数年以内に再読予定。2023/12/06
hisa
2
この本の中の一節を引用している文章と出会い、興味が湧いて購入した。北斉の時代の話になるので、今の基準から考えれば「やりすぎ」感は否めない。しかし、「学び続けることが大事だ」というのはいつの時代、どの地域でも変わらず強調されてきたことなのだなと再確認することができた。ちなみにこの著者の子孫には書で有名な顔真卿がいる。2020/04/02