内容説明
雨に濡れた町は、すべてが目に色濃く、音は少しくぐもって聞こえる――。頬に感じた風の香り、あの日のカルピスの味、指先に触れた黒白の鍵盤の温度……。歌壇を牽引し、心の琴線にふれる言葉を紡いできた著者が、二十五の町の表情を五感でつづる。瑞々しい感性で掬い取られた何気ない日常の風景やワン・シーンが、あたたかく、せつなく、時に妖しく映る。あなたを愛おしい気持ちに包み込んでくれる珠玉の一冊。『東京都北区赤羽』の著者にして、町歩きの奇才・清野とおる氏による特別解説付き!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さおり
44
Kindle Unlimitedで。東さんが行ったことのある町について、考えたことをあれこれ書いているエッセイ集。脳みそをそのまま出しちゃった感じで、思いついたことにどんどん話がうつっていくのでついていくのが大変。で、そのうちついていく必要もないかとこちらも自由な気持ちになって、文字を追いながらも思考がばらばらになることを繰り返した。そんなこんなで読了に時間がかかったけれど、とても楽しい読書時間でした。解説は壇蜜さんの旦那さん(たぶん)が書かれてました。2020/05/17
penguin-blue
35
25の町の表情を五感で…とあるが、町の紹介ではなく、あくまでその町のイメージやエピソードを糸口に自由に紡ぎだしたエッセイ。基本的には穏やかな優しい言葉が並ぶが、時折はっとするような文章にぶつかる。本を閉じれば、気持ちの良い日(晴れた日とは限らない)にひとりでちょっと満足感の高い散歩をしたような、そんな読後感。2019/01/08
mntmt
28
作者がいつか来た町について語るエッセイ。読み始めは、どの町なのかわからない。だんだんわかって来る。そこが良い。だんだん話がそれて来る。それがまた良い。町の名前を訓読みすると、その町が見えて来るのだなあ。大変面白い。2017/05/10
coco夏ko10角
17
二十五の町の表情、エッセイ。切り取り方や表現がならではな感じでいい。少しずつのんびりと読み進めた。2023/05/13
ほっしー
14
著者がいつの日か来たことがある町について、見たものや感じたこと、そこから連想されることを綴った本。各文章の冒頭には町の名前は書かれていないんだけど、読んでいくうちにどの町のことが語られているかがわかるという仕組みになっていて、毎回わくわくしながら読めた。松山の俳句ポストやポンジュース、池袋で迷った話、下北沢の五叉路など実際に自分も行って見たり経験したりしたエピソードも書かれていて、こんなことあったなあと思いながら読んだ。その町ごとに自分なりに特色を見つけるのは面白い。旅って町歩きの延長なのだから。2017/03/31