内容説明
大正から昭和初期にかけて起きた親鸞ブーム。その絶対他力や自然法爾の思想は、やがて“国体”を正当化する論理として、右翼や国粋主義者の拠り所となる。ある者は煩悶の末に、ある者は戦争の大義を説くために「弥陀の本願=天皇の大御心」と主張した。「親鸞思想と国体」という近代日本の盲点を衝き、信仰と愛国の危険な関係に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
43
浄土真宗の門徒を自認する政治学者は、<「親鸞と日本主義」というテーマでは、これまで教団の戦争協力の問題に焦点が当てられることが多かった。そのとき、問題とされてきたのが「真俗二諦炉論」である>が、それだけでは不十分で、<親鸞の思想そのもののなかに、全体主義的な日本主義と結びつきやすい構造的要因があるのではないか/その思想的危険性を顕在化させたのが、大正から昭和前期の親鸞主義者>ではなかったかと問い、<親鸞を信奉した宗教者・文学者・哲学者たちの思想にメスを入れ、親鸞思想と日本主義の関係を検討>した書。労作。⇒2021/01/07
koji
20
中島岳志先生の著書は、「中村屋のボース」、「血盟団事件」、「現代の超克」(若松英輔共著)に続き4冊目。私が「日本とは何か、日本人とは何か」を追いかける時に欠かせない研究者の一人です。著者は、親鸞の「悪人正機」を根源に据えて保守思想を体系化することを研究目的としており(序章)、本書は、戦前の国体論が親鸞の論理と接続し、浄土教が生み出した国体論が逆に浄土教を呑み込んでいく現象が起こったと結論づけています。三井甲之、倉田百三、亀井勝一郎、吉川英治、暁烏敏の人物論との関連づけがユニークで読み飽きません。満足の一冊2018/04/30
ゆう
15
倉田百三は『出家とその弟子』で、絶対他力にすがりながらも悩み苦しむ人間の姿を、親鸞と弟子・唯円の問答を通して描いた。これは、個人の救済を真剣に追求した宗教的に誠実な作品であり、読んで深く感動した。しかし倉田について調べるうちに、彼が本書の後、ファシズムに共鳴する思想を展開し、それゆえ戦後には顧みられない存在となったことを知った。しかも、そのファシズム傾倒は親鸞思想からの離反ではなく、むしろ親鸞の思想に強く影響されたものだという。2025/04/05
かんがく
14
戦前右派思想と仏教というと日蓮宗を連想するが、本書では親鸞の思想が近代の様々な思想家に与えた影響を分析していく。西洋由来の近代理性主義や、革命を目指すマルクス主義を「自力」を過信した思想として批判して、親鸞の「他力」の思想を対置するという発想が新鮮で面白かった。2024/05/31
軍縮地球市民shinshin
14
著者と僕とは思想的立場はまるで違うのだが、中島氏の超国家主義や「ファシズム」に関する著作はなるべく読むようにしている。研究者にしては珍しく「作家的」な文章が書ける人だ。本書は親鸞開祖の浄土真宗の教義が、なぜ戦前の「天皇制全体主義」に近づき理論的支柱の一つになったのかを、親鸞教徒の学者や評論家、文学者、または僧侶の言説を丹念に追いながら解き明かしたもの。このあたりが結論になるのか。「国体の構造では、超越的な天皇のもと、国民は一般化され、平等化される。国民の間に格差や断絶は存在せず、一つの渦に溶け込んでいく2018/05/01
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