内容説明
この小説の主役は、読みながら読者の心に去来するその人その人の時間と光景だ。人は孤立していない、一人一人は閉じられた存在ではない。人は別々の時間を生きて大人になるが、別々の時間を生きたがゆえに繋がっている。(「あとがき」より)
【この本に出てくるものたち】
怪傑ハリマオ、ナショハルキッド、七色仮面、コマ回し、三角ベース、貝殻拾い、力道山、プラモデル、『力持ちのポール』、クレイジーキャッツ、『恋の片道切符』、まぼろし探偵、野球、石蹴り、加山雄三、防空壕、伊賀の影丸、鉄人28号、鉄腕アトム、『少年サンデー』、ドロケン、マルハナバチ、木登り、友だちと好きな女の子。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
35
見たこと、感じたことを散文的に書いている印象です。そのせいか話が急に飛んだりなど、大人目線と子供目線が混在しているように思いました。2024/01/17
きょちょ
21
作者の子供のころの思い出・記憶を、作者らしく良い意味でとりとめもなく書いた本。 作者と若干の年齢差があるためか、あるいは今私が自分の子供のころにほとんど関心がないためか、作者を良く知る友人は良かったというが、私はそれほどでもなかった。 しかし、彼は子供のころをよく覚えているものだと感心はした。 特に幼稚園時代。 私は幼稚園時代東京の中野に住んでいたが、近くで火事があったこと、団地の4階だったが、セミが鳴くと一番に取りに行ったこと、母の昼寝中がま口あいてて10円玉盗んでアイスクリーム買いに行ったこと位。★2019/11/06
qoop
7
少年時代に材を取り、見た/感じた驚きをそのまま映し取ったかのような鮮烈な世界。ノスタルジーではなく、今も著者の中に生き生きと息づいている情景/感情の豊かさに驚かされる。記憶をシャッフルするかのように次々に開陳されていく描写は、子供の精神がいかに疾走感をもって世界を認識しているかを再認識させてくれる。現在と過去の境界を越えて伸び、層を成しつつ渾然一体となった著者の内面にひととき遊ぶかのような読み心地。2022/04/10
たんかともま
3
物語以前という感じの作品。一応、小説だが連鎖的な回想でひとつの物語という印象は受けず、大人の時点から子どもの頃感じていたものをなるべくその時の印象のまま、書き起こそうとしている。そのため、一文が異様に長かったり、風景描写が緻密だったり、変な修飾のない真っ直ぐな表現をつかったりする。記憶と場所、みたいな軸をよく用いる作家だと改めて思ったが、いつも以上に起伏がなく、どこから読んでも楽しめると言えば聞こえはよいが退屈。従兄や家族との距離感がリアル。失われた時を求めてのマドレーヌだけで小説にしたかのような技法だ。2020/09/22
maqiso
2
落ち着きがないと書いてるとおり、記憶のままにあちこちに話が飛ぶの面白い。山と海はあるが川がない鎌倉のイメージが良い。2022/01/16