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内容説明
北東アジアの雄・ヌルハチ率いる満洲人の国家は、長城を越えて漢人を圧倒し、未曾有の大版図を実現した。康熙帝・雍正帝・乾隆帝による最盛期から、アヘン戦争・日清戦争をへて、ラストエンペラー・溥儀、西太后、李鴻章、孫文らが登場する清末まで、栄光と苦闘の270年を描き出す。「中華の文明」ではなくチベット仏教に支えられた、輝ける大帝国が抱え込んだ苦悩とは。「近代東アジア」と「中華民族」はいかに創り出されたか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
筑紫の國造
12
編年的に歴史の経過を記述するだけでなく、空前の大帝国である「清」の興亡を追いながら「中華」の意味を問う意欲作。20世紀初頭に滅びた清王朝は、過ぎ去った歴史の一コマではない。中華人民共和国は今も「清」という王朝の領土を継承したと称している。本書では、現代「中国」の前身とも言える清の歴史の中に現代につながる問題点を見出し、読者に提示する。清の歴史を綴りながら、「中国」そして「東アジア」そのものを俯瞰している。「歴史を鏡とする」という考え方からすれば、本書は正しく歴史書だと言えるだろう。2024/02/13
かんがく
12
中央アジア的な多民族帝国から、主権国家「中国」へ。教科書的な内容から数歩進み、各時代の各勢力の思惑や行動について引用史料とともに深ぼりしているのでとても面白い。扱う時間・空間はとても広いが、テーマが一貫しているため読みやすかった。2022/01/06
アメヲトコ
5
2007年刊書の文庫化。満州人による巨大帝国である清朝の興亡を描いたもの。中国史を語るうえでの「東アジア」という枠組みに疑問を呈し、「内陸アジアの帝国」という視角を加えることで、清朝から現在に至る中国と周辺地域の問題の構造を鮮やかに浮かび上がらせています。清朝の秩序という点では雍正帝の再評価が興味深く、またそれとの比較で近代の主権国家体制の到来にともなうモンゴルやチベットの運命は悲しいものがあります。2018/01/22
バルジ
4
近代国際関係の中で滅亡した「大清帝国」衰亡史。内陸アジアの帝国として出発した大清帝国が「盛世」から海域世界による侵食を経て内陸アジアの帝国としての地位を捨て近代国家へと進む、いわば悲劇の歴史を本書は論ずる。特徴的なのは内陸アジアの帝国としての「大清帝国」のアイデンティティに力点を置いた点であろう。モンゴルとチベットは皇帝に服属というよりも、チベット仏教を媒介した大施主としての皇帝に服属する。ここでは「中華」の論理は用いられない。しかしこの個人への服属が突如「領域」と一体化した瞬間、苦難の歴史が始まる。2024/03/10
ユウティ
3
ボリュームあった。感想はとても書き切れない。何人かの中華ドラマの皇帝が言っていた「朕は暗君ではない」。これが支持率などの話に対してではなく、皇帝個人の矜持を表したり、時にはいじけたりの記号のような台詞に思えて、そのココロを知りたくて読んだ。清の場合は漢族、モンゴル、チベット、ジュンガルなどから認めてもらわねばならない他力本願な地位であったことが、皇帝のどこかいじいじした独特のアイデンディティを生んだのか?珍しく目的のある読書をしたんだけれど、自分なりの解釈が出来たから満足した。次は紫禁城から見た歴史へ。2021/06/15