内容説明
縫製工場で働く大神は、受注した制服のデザインを盗作ではないかと疑うが、指摘できずにいた。ある日、職場体験に来た中学生キクチと触れ合ううち、事なかれ主義になっていた自分に気づく。俺はいつからこうなった? 自問する大神の中で、何かが少しずつ変わっていく……(「一匹羊」)。職場で、家庭で、小さな町で。新しい一歩を踏み出す人々を描く、傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
218
山本さんの人情&お仕事の話がしっかり詰まったナイスな短編集です。さすがに短編集なので、長編に比べるといつものジワワ〜とくる感動の波は若干控えめですが、それでもしっかりと読者をホンワカとさせてくれるところはさすがでした。一作それぞれにちょっとした苦悩がありながらも、最後には前向きに一歩でも明るく進もうとする主人公達のメンタルに勇気をもらいました。その中でも、やっぱり醐宮女史はインパクト強烈ですね。また牟田君やタイトル作に登場する総務部長と森園さんが再登場し、リンクする『展覧会〜』を読むのが楽しみです!2014/11/11
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
101
〈等身大の人々の物語〉という印象を持ちました。大事件は起こらず、大きな不幸もないけれど、人生そんなに甘くない。でも、前を向き、今日よりは素敵な明日を信じて一歩ずつ進もうとする人たちの小さなドラマが描かれています。9つの短篇を収録。表題作は、縫製工場で働く40男が主人公。自分の限界がみえて、尖っていた部分が丸くなり、流されながら過ごす日々。でも、時には流れに逆らって生きてみたい。好きだったのは、閉塞した町の役所で働く女性が、故郷を棄てた先輩の力を借りて地域振興に奮闘する『ビニールハウスの下の泥鰌』でした。2015/02/01
takaC
80
山本小説の中では、なんとなく物足りない一作。贅沢?2015/11/24
tokotoko
66
全9話からなる短編集です。でも短編集じゃなくて、9冊の本を読んだみたいな読み心地です。全部のお話に、「ドキッ!」とする山場が必ずあるのですが、解説の方の言葉をお借りすると、もうどれもこれも、"絶妙のさじ加減"。だから、「ああ、美味しかったぁー!」ってニコニコしてゴールできます。そのゴールの向こう側に、作者山本さんのお月さまみたいな優しい笑顔が浮かびます。人間っていいよ、変われるんだもん、面白いよ、だから大丈夫なんだってばー!!って言いながら、待っててくれてるような気がするのです。2016/05/03
@nk
47
約4年半ぶりの再読。9つの短篇は結局どれも心地よい。ひやりとする場面も あるのだけれど、現実の域は越えない。きっと私たちの日常でもよくあるからだろう。日常ってのは喜怒哀楽とともにあるもんだよなぁと、登場人物たちの右往左往を無意識に自分事へ置き換えて読んでいた。どの篇もラストで読み手に、あたたかいくて小さな、けれど力強くて新しい光の射す情景を見せてくれる。この読後感が、山本幸久という小説家の世界だと思う。著者と交流が深いらしい作家の書いた解説で、最後でふれられていたのは「ジャージの2人」で実現されたんだね、2024/02/09
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