内容説明
誰も本当の名前を思い出せない、不思議な表情をしたただFと呼ばれるとらえどころのない少年。あるシューズメーカーのお客様係に勤める35歳の容子は、不良品のクレームを会社が隠ぺいしようとしていることに気がつく。自分はどうすべきか迷い、小学生の頃自分をかばってくれたFだったらどうするだろうと自問する。高校で一番の悪だった悦史は、荒っぽい解体業を営む43歳の今も、昔リンチに遭わせたFの事を時々思い出す。老舗の茶商で社長を務める41歳の有輔は、25年前淫蕩な母をナイフで刺し家出しようとしていた自分をそっと押しとどめたFの一言を思い出していた……。目撃談のように語られるそれぞれの人生に立ち会ったFの記憶、それは今も深く心の奥底に生きている。そして最終章で描かれるFの真の姿とは…? ミステリアスな構成から紡ぎだされる陰から光に、喪失から再生へ踏み出していく人の背中を押してくれる、美しい物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coco夏ko10角
25
色んな時期にFと関わった三人とF本人のお話。小・中・高ずっと同校だった人でも名前が思い出せない、しかも変わることなくずっと「F」…。色んな人から見たFのこと。一体どんな人?となっていたところへ最終話で本人が。2018/05/31
のの
11
名前も覚えてもらえずFと呼ばれる男の子。 だけど、なぜかみんながFとの忘れられないエピソードを持っている。理解出来ないものに対する好奇心、恐怖、羨望、Fに対する感情が様々で どれほど魅力的な人なのか気になったところで最終話、ついにご本人登場!とてもおもしろかった。2018/11/29
hiromura
5
紅雲町珈琲屋シリーズの吉永さん。Fと呼ばれる人物の印象は良くないし、それぞれの主人公も好きになれなかったが、ラストのF本人の話が良かった。2022/08/20
へいがぁ
2
この作家さんの淡々とした筆致が、好みです。主役(?)の存在感も良いですが、やっぱり老女を描くのが抜群に上手いと思います。2018/02/23
gmax
2
Fの行動に影響を受けた3人と、そのFの話。名前も覚えていない人でも、人生に影響を与えることがあるという観点はいいなあ。それが他人との距離感を上手く構築できない(と思っていた)Fだからこそ、というのが大きなポイントか。個人的には3人目の「俺には家出はむいてないらしい」という締めくくりが好き。/実は文庫までにずいぶんかかったのね、というのを解説読んで知った。2018/02/02
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