内容説明
平穏な時間。それ以外に欲しいものなんて何もない――。山崎由実はすべてを捨てて家を飛び出し、知らない町の古びた薬屋に辿り着いた。店主の平山タバサは、由実を薬局の手伝いと家事全般の担い手として住み込みで雇ってくれた。見ず知らずのわたしを、なぜ……。謎めいたタバサの本心はわからぬままだが、由実は次第に新しい生活に慣れてゆく。誰しもがもつ孤独をたおやかに包み込む長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
117
「世界は、ほんとうに存在しているのかどうか、疑問に思うことはありませんか?」嗚呼、そうだね。「ありますよ。」と私は答えたい。-不思議な読書だった。厚くもない文庫だが、読了に時間を要した。ぎっしりと、東 直子の紡ぐ『大人のおとぎ話』だと思った。ちょっと怖くもあった。私の深層心理を擽るような・・何とも言えない世界がそこにはあった。2017/08/10
ゴンゾウ@新潮部
100
幻想的な世界を漂っている感覚だった。息を吹きかければ弾けてしまいそうな世界だった。ひとつひとつの言葉や文章がとても美しく優しい。タバサのこと、由美のことが常に謎めいてあいまいに進んでいく。不思議な読後感だが決して嫌いではない。2018/06/08
エドワード
57
行き場を失った由実がたどり着いた町の薬局。何も聞かず、彼女を置いてくれた主人、タバサ。女性の名を持つ男性と由実との生活。不思議尽くしだ。店での、町中での、家での二人の会話。通りの名前。町の人々。ファンタジーともミステリーとも異なる、夢物語。タバサの処方する薬で由実の見る夢。「なにもかも、夢であるように思えます」「いよいよ海ですね」「千手観音の一本の指にうまれなおす」瑞々しい言葉たち、町の人々はみな親の職業を継ぎ、永遠の日常が続くかのような、深い孤独感も実に印象的。タバサの子を産んだ由実の帰る家はいずこ。2017/08/07
TANGO
48
薬屋さんのほのぼの系の癒し本、だと勝手に思って読んでたら、思ってたよりも生々しくて、思ってたよりも不安定な物語で、読み終 わったあと、呆然とした。解説にもあるが、難しいことばも文章もないが、読んでいる間じゅう、なぜだか落ち着かない。けれど、この不気味で孤独な町に行ってみたい、と思ってしまうのは、ワタシが今孤独だからだろうか。でも、「遠くへ行きたい」とも思うのだ。2018/01/23
penguin-blue
43
読む前は「心に傷を負った女が薬屋のタバサおばさんの元で様々な人と出会うことによって再生してまた生きる道を見つけていく話」だと思っていた。実際はタバサは男で、物語の世界は現実世界の延長にありながら何とも不可思議で、とらえ方が難しい。主人公が居場所を見つけた感じはなくはないものの、最後まで何となく所在がない感じは続き、めでたしめでたしとはならない。たぶん、「とりつくしま」より本来の東さんの世界はこっちなんだろう、と思ったりする。2018/02/28
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