内容説明
忘れ得ぬ人と映画の思い出を叙情豊かに描く。
岩瀬修は63歳。今は文具会社の経営陣に収まっている。彼には、昔夢中になった任侠映画にまつわる忘れられない思い出があった。初めて観たのは中二のとき。すぐに高倉健のファンになった。映画を観たいがために稼業の飲み屋を手伝うようになり、周囲からはヤクザと煙たがられている中間のおっちゃんと仲良くなる。そして、心臓が悪い従姉妹の弥生が、近くの県立病院に入院してきた。学校に通えない弥生のために、修はプリントなどを届けに行くようになった。弥生は優秀で本好き、しかも絵を描くのが抜群に上手い。ケンカもしながら、親しくなっていく。任侠映画と二人との出会いを経て、修は大学進学のため東京へ――。人生の荒波に漕ぎ出し始めた。
任侠映画に、そして主人公達に夢中になった青春時代。たかが娯楽映画、でもそうではなかった。あの頃の出会いがあって、今の自分がいることを、切ないエピソードとともに感じるのだった。
ノスタルジックでハートウォーミングな、小説版『ニュー・シネマ・パラダイス』!
※この作品は過去に単行本として配信されていた『銀幕の神々』 の文庫版となります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
123
★★★★☆18076 会社の専務取締役63歳男性が主人公。高倉健に憧れていた中学3年まで一旦、時間を戻してから現在に至るまでを描いたスタイルの作品です。山本さん作品の中でも当方的に抜群の面白さでした。若干ウルっとするところもありました。(年頃の男子あるある的な要素もたっぷりなので女性にはウケないかもしれませんが...)ガラス瓶ラムネのビー玉の音、カップアイスの蓋の裏に付いた薄っすらアイスの愛しさ。ん〜心揺さぶる言葉の羅列です。いや〜、運命って自分の選択や出会いの積み重ねから起きる必然なのでしょうね。2018/09/09
ゆみねこ
71
任侠映画から高倉健にあこがれて、その姿を真似るまでになった岩瀬修。家業の酒屋の手伝いで知り合ったナカマのおっちゃんや、心臓の病で早世した従妹の弥生。彼の人生にかけがえのないものを刻んだ「運命のひと」。とても素敵な物語。「銀幕の神々」を文庫化で改題とのこと。2018/03/10
ぷにすけ
17
銀幕のスター「高倉健」にあこがれて育った修の物語。まさしく昭和を思い浮かばせるような懐かしさに満ちたお話だが、若い方々にはどうでしょうか(笑)うーん今では考えられない展開かも?年配の方たちにおススメと言っておきましょう。2023/07/05
Mori
15
中間のおっちゃんに、従姉妹の弥生、そして高倉健さん。人との出逢いを前向きに活かしていく主人公は、ただ模範的な人ではなく、その時期その時期において、壁や葛藤を感じている。それでも、我慢と行動という相反するものの間を、大切な人たちの支えのもと、突き進んでいく。そしてその姿は、男の様としてかっこいい。男の喧嘩は一生に一度。肝に銘じよう。2018/05/04
とりあえず…
11
安定の人間味ある面白さ。犬に例えると柴犬な感じ。なぜ犬に例えたのかは自分でもわかりません(笑) その出会いがかけがえのないものであること、きっと誰にでもある。出会ったその時は気づかないことがほとんどだけど。誰に出会うか、なんだよねー2021/08/16