内容説明
日本ナショナリズムは、なぜ第二次大戦という破局的帰結にいたったのか。それ以外の可能性は本当に存在しなかったのか。──これが、かつて自らも日本浪漫派に熱狂した青年であった橋川文三が生涯抱え込んだ難問であった。この問いに向き合うべく、橋川は明治維新前後の黎明期へと遡行し、その起源に肉薄する。水戸学から松陰へと至る士族の流れと中間層における国学の系譜との相克。その間隙を衝くように行われた明治政府の国民統合政策。「隠岐コミューン」に託したもう一つの可能性……。日本ナショナリズムの形成過程をダイナミックに描き出す、第一級の古典。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
25
1968年初出。ハーツは郷土感情と祖国愛の国土感情を区別している。ドイツの地法的パトリオティスムス、イタリアのカンパニリスモ(田舎趣味)が郷土感情になるようだ(026頁)。本居宣長の政治とは、委任関係を指す御任(みよさし)の観念で説明している(130頁)。国学は外国人からはNational Learningとよばれるようだ(133頁)。福沢諭吉の生涯の目標の一つは、民衆をして真のネーションたらしめんとすることにあった(200頁)。2015/12/05
かんがく
14
ナショナリズム論の名著。序章のナショナリズムの定義についての、パトリオティズムとの比較から面白い。武士の間で流行した水戸学、中間層に広まった国学から、明治政府の成り立ちを紐解く一章と、福澤に「ただ政府ありて、未だに国民あらず」と言われた明治初期のネーション形成を描いた二章。「上からのネーション形成」という点で、フランスなどとは大きく違う日本のナショナリズムの特性。古代の天皇親政と、中世の封建的家族制度の影響が大きい。2019/12/02
勝浩1958
5
水戸学や吉田松陰の思想、国学、そして明治政府の政策、それぞれの内容について興味は尽きないのですが、それらがどうナショナリズムにつながっていくのかがいまひとつ理解できなかった。2015/09/12
馬咲
3
明治維新は日本版「市民革命」とはならず、「国家」が先に成立し、民衆を教化・統合する形で日本の「ネーション」は上から形成された。それに対し著者の関心は、幕末の日本にどのような「下から」のネーション形成可能性があったかにある。吉田松陰のような武士層では水戸学、『夜明け前』の半蔵が典型である中間層では国学が、古代日本への憧憬から封建制の枠を越えた共同体観念とその防衛意識を喚起したが、そこでは個々人の人格は天皇という具体的人格への合一によって解消され、ルソー的「一般意思」は成立し得ないという思想的限界があった。2024/04/04
chiro
1
民主主義を営むにあたりルソーの「一般意志」の概念をベースとすることが望ましという考えは広く認知されているがそれがどの程度の規模が望ましかと言われた際に2万人程度の構成員の顔が認知できるレベルでそれを超えると難しいと言われているが著者はこの考えを踏襲しているのかわが国が民主化する際に可能性としてあった「隠岐コミューン」に言及しそのレベルのコミューンが各地にでき共和制をとっていたら我が国はどういう国になっていただろうかという問題提起は今の時代にこそ考察されるべきものと感じた。2023/08/11
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