河出文庫<br> 西瓜糖の日々

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河出文庫
西瓜糖の日々

  • ISBN:9784309462301

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内容説明

コミューン的な場所、アイデス“iDeath”と“忘れられた世界”、そして私たちとおんなじ言葉を話すことができる虎たち。西瓜糖の甘くて残酷な世界が夢見る幸福とは何だろうか…。澄明で静かな西瓜糖世界の人々の平和・愛・暴力・流血を描き、現代社会をあざやかに映して若者たちを熱狂させた詩的幻想小説。ブローティガンの代表作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

293
中空にぽっかりと浮かんだ詩のような小説。しかも、この物語は、より大きなメタ・フィクションの一部であるかのようなのだが、どうやらこれで自足し、完結しているようだ。iDEATHというコミューンを核とした不思議な世界がそこに現出するが、その名前からも明らかなように、そこは「死」の世界を内包しているようなのだ。静かな静かな世界―しかも、そこには西瓜糖の甘やかな香が横溢している。そして、隣接して存在する<忘れられた世界>からは、「滅び」の空虚と頽廃とが漂ってくるのである。 2012/07/25

しゅう

142
リチャード・ブローティガンの3作目で、藤本和子さんの名訳で楽しめた。アイデス(iDEATH)と呼ばれるコミューンで暮らす人々を描いた物語。アイデスは一見すると理想郷だが、その一方で不穏なもの、グロテスクなものも描かれる。死を内包した地なのかもしれない。〈忘れられた世界〉は何を意味するのか、インボイルの果たした役割とは何だったのか、読後も興味は尽きない。『西瓜糖の日々』は理想郷の物語ではなく、理想郷を維持するために何を忘れなければならないのかを描いた物語のように感じた。→2026/06/16

kinkin

136
ブローディガンは「アメリカの鱒釣り」以来だ。読んだといってよいのか体験したといってよいのか戸惑いながら。本の中には始まりも終わりもない西瓜糖の世界が広がっていた。大声や喧騒のない静かな世界がキラキラと輝いているように感じた。西瓜糖の濃縮された甘さ、それが結晶化してきらめいてみえるのかもしれない。読んだ本というよりも常に読み続けている本ということにしたい。2016/08/11

ケイ

121
これを書いた時代の未来に対する絶望や諦観が伝わってくるよう。不必要に発展していく時代から古い秩序ある時代への回帰願望がほのかに見える気がする。村八分的な冷たさや容赦のなさは、アメリカでは、前からの入植者と新参者との間に実際にあったのではないか。自分たちを守るために、身内のような仲間内では助け合いながらも、仲間ではない者や仲間ではなくなった者達に対する冷たさにはぞっとした。かすかに幸せも見えるが、読後にはやるせなさが残る。スイカは、甘いけれど、水っぽい。渇きや癒せても、心の飢えは癒せないのだろうか2015/08/24

青蓮

119
読友さんのお勧めから。とても良かったです。コミューン的な場所、アイデスと【忘れられた世界】、そして言葉を話すことができる虎たち。西瓜糖の甘くて儚げな世界は現実から遊離した詩的で幻想的な心象風景。しかし、そこは優しいだけの、完璧なユートピアではない。流血や自死もある。【iDeath】との名の通り、そこは最も死に近い場所なのかもしれない。もしくは目を開けたまま、束の間に見る夢なのかもしれない。「あなたがわたしの名前をきめる。あなたの心に浮かぶこと、それがわたしの名前なのだ。」2017/08/01

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