内容説明
異なる文化のあいだでの腰を据えた〈対話〉がますます求められる時代.そのためにはまず自文化の基礎的な知識を得る必要がある.本書では西田幾多郎の思想をヒントに,西行の「桜」,親鸞の「悪」など5つのキーワードから,日本文化の根底にあるものの見かた,美意識のありかたを素描.日本文化の一つの〈自画像〉を描く.
目次
目 次
序──日本文化の自画像を描く
第一章 西行の「心」──無常の世と詠歌懸命の道
1 「心」を凝視した歌人
2 出家として、「歌よみ」として
3 西行とその時代
4 西行の境涯
第二章 親鸞の「悪」──末法の世における救い
1 末法の世に
2 徹底した「悪」の自覚
3 逆説としての救い
第三章 長明と兼好の「無常」──二人の遁世者
1 遁世のさまざまな形
2 長明の最後の境地
3 兼好の無常観
4 「つれづれわぶる」生
第四章 世阿弥の「花」──能と禅の交わり
1 無常と「飛花落葉」
2 室町文化と世阿弥の能
3 「花」と「幽玄」
4 無心と妙──たどりついた境地
第五章 芭蕉の「風雅」──わび・さびと「自然」
1 西行から利休を貫くもの
2 「わび」と「さび」
3 風雅の誠──「成る句」と「する句」
4 自然の声を聞く
5 漂泊と風狂の生
終 章 西田幾多郎の日本文化論──世界主義という視点
1 時代の流れのなかで
2 世界文化の創造にむけて
あとがき
引用・参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こぽぞう☆
13
西行、親鸞、長明と兼好、世阿弥、芭蕉の五章からなる日本文化論。全てを貫くのは「無常」なのだけど「無常」だけが日本文化?となった。また、彼らの残した文章から思想を取り出しているが、彼らのうち何人かの伝記を読んだ者としては、それだけでいいのか?とも思った。2019/03/17
politics
8
西行、兼行、世阿弥、芭蕉らの文芸から日本文化の基底・美意識を掬い出し、最後に西田幾多郎の日本文化論からいかに日本文化を論ずるかの方法論を検討した一冊。取り上げられたものの共通点として無常や虚無感、生死などがキータームとなっており、これらは著者も連なる京都学派の哲学者が論じた点と共通し、日本文化の中にいかに哲学的要素が多いかが改めて確認できる。文学・思想・哲学の三つの領域が日本では密接に関係し合っている事が理解でき、相互に参照し合いながら学習することが重要なのだろう。2023/06/21
みつ
7
世界のグローバル化の中、異なる文化や思想との「対話」を意義あるものとするため、明確な「自画像」を描く必要がある。・・・序で著者はこのような趣旨を述べ、「心」「悪」「無常」「花」「風雅」の5つのキーワードと、それぞれが結び付く5人(西行、親鸞、兼好、世阿弥、芭蕉)の思想を辿る。著者自ら断っているように、ここで触れられるのは、あくまでも日本の詩歌や芸術、宗教の歴史そのものであり、それらが広い意味での日本文化にどのように影響を与えたかは不明。終章にある西田幾多郎の提唱する多文化創造への歩みは、読み取れずじまい。2021/06/01
sk
6
西行、親鸞、兼好、世阿弥、芭蕉の思想を紹介。日本の伝統を知るのによい本かも。2019/01/22
nnnともろー
6
西行・親鸞・芭蕉…日本文化に通底する無常観。グローバル化の中での日本文化のあり方。今だからこそ西田幾多郎の文化論が光る。2018/03/21