内容説明
外交官から首相秘書に抜擢された新一は、七つの別人格に苦しむスパイでもあった。その新一が仕える世襲総理松平定男は、凡庸な極右との前評判を覆し、米大統領をも黙らせる名演説で世間の度肝を抜く。しかし彼の内部にも奇妙な変化が現れて……。二重スパイと暴走総理は日本の破滅を食い止められるのか?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
76
一風変わった政治サスペンスもの、なのだろうか。多重人格の総理とスパイはこの国をどこに連れていく?虚構というには妙にリアル。実際のスパイはこんなふうに静かに組織の中枢に食い込んでるだろうし、勇ましく攻撃的な指導者が持て囃されるのも見慣れた光景。しかも今のアメリカの大統領がああだし。昨今の状況をふまえると、本書が描くような事態はあり得る未来、否、既にこの方向に既に走り始めてるのではないかと怖くなる。戦争に対する価値観によって、本書の評価はかわりそう。某総理大臣のイメージがちらつくのは確信犯ですよね、島田さん。2025/05/21
ちくわ
27
国家という虚人を、政治家というこれまた虚人が動かしています。政治の複雑怪奇さを、多重人格というメタファーを使って鋭く表現していますね。対中国、対米の国際情勢の勉強にもなりました。島田雅彦は10年ぶりぐらいでしたが、やっぱり面白いです。(☆4)2022/12/08
かんがく
11
スパイの青年と世襲総理大臣が主人公。米中に挟まれた日本がどういった道を進むのかという大きなストーリーだが、全体的に軽くてチープさを感じてしまった。筆者と同世代の読者は喜びそう。2020/12/28
Mao
7
現実の結末もこうなってくれたら良いのだけど 2019/08/05
YH
6
日本自体が抑圧され、精神が引き裂かれているという事は大分以前から、心理学の岸田秀先生も主張されており、それが物語になったのが本編かしらと思った。2018/11/14