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内容説明
終わらなかった戦争を、家族は生き抜いた。
最後の帰還者が持ち帰った、奇跡の一次資料。
未完の悲劇、シベリア抑留。最後の帰還者の一人、佐藤健雄さんが妻とし子さんらと交わした葉書が見つかった。
ソ連は国際法違反である抑留の実態を知られぬために、文書の持ち出しを固く禁じていた。
しかし、佐藤健雄さんは妻たちと交わしたハガキを密かに持ち帰っていた!
一つの家族がつないだ奇跡の一次資料を元に、終わらなかった戦争を描く。
<目次>
はじめに
第一章 佐藤家の人びと
第二章 抑留される
第三章 抑留生活の日々
第四章 命のハガキ
第五章 見えない出口
第六章 帰国、再会まで
第七章 ソ連研究の専門家として
終章
あとがき
主要参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
111
シベリア抑留はソ連の国際法違反の犯罪である。抑留者で最後の帰還は1956年。実に11年間の抑留を生き抜いたことは奇跡と思う。紹介されている佐藤健雄さんは福島県喜多方市(旧山都町)の出身で、身近に感じ手に取った。シベリア抑留については何冊か読了している。改めて知ったのは、抑留者が日ソ間の外交問題のカードとして使われたこと。人質として抑留者を扱ったソ連は実に恐ろしい国家だ。北方領土の四島返還も容れられず、平和条約締結時に二島返還としたが現代もそのまま。日本政府も抑留者への支援の強化や追悼式典が必要と思う。2020/01/10
ケニオミ
17
私事ですが、亡くなった父は終戦時満洲にいました。私が幼い頃何度か満洲での思い出を話すよう促したのですが、一度も口にすることはありませんでした。ただ一言父が言ったことで覚えていることは、「ロシア人を信じるな」でした。満州で余程つらい経験をしたしたのでしょう。本書を読んで父のことを思い出しました。ポツダム宣言を無視して、日本人を抑留したばかりか、抑留者を人質にして北方領土の日本への返還を阻止したロシア。この歳になって、ロシア人についての、実体験に基づいた父の言葉が段々と真実味を帯びてきています。2018/06/23
おせきはん
13
第二次世界大戦後シベリアに抑留され、帰国に11年を要した父親と、先に帰国していた母親と5人の子どもの一家の間で行き交った52通のハガキをもとに、シベリア抑留の実態と、抑留者の帰国に向けた日ソ間の交渉の歴史が明らかにされています。国交回復交渉の取引材料にされて帰国が先送りされる中でも、家族とのハガキを支えに帰国への強い意思を持ち続け、劣悪な生活環境を乗り切った抑留者の方々、そして帰国を信じて待ち続けた家族の方々には頭が下がります。2018/07/20
2ndkt
5
シベリア抑留者が、頻繁に家族と葉書をやりとり出来たことを知らなかった。著者言及のとおり、これだけの葉書が現代まで残っているのは奇跡的。公開を了承した遺族にも敬意を抱く。 改めて、シベリア抑留者の惨劇には眼を覆いたくなる。敗戦とスターリン政権とに巻き込まれた人生。想像に余りある。2018/02/12
にゃるねんnnn
4
1度起こしてしまった戦争は、いつまでも終わらない。帰国後も肉体的にも精神的にも苦しんだ抑留者の証言が胸を打つ。辛い記憶のほうが多いだろう貴重なハガキを大切に保管して下さった方々に感謝したい。誰にも現実を知られずに歴史からほふられる事のほうが、何よりも残酷だと思うので。2021/09/04