内容説明
「日雇労働者の町」と呼ばれ、高度経済成長期に頻発した暴動で注目を集めた大阪のあいりん地区(釜ヶ崎)。現在は高齢化が進むなか、「福祉の町」として知られる。劣悪な住環境、生活保護受給者の増加、社会的孤立の広がり、身寄りのない最期など、このエリアが直面している課題は、全国の地域社会にとっても他人事ではない。本書は、貧困の地域集中とその対策を追った著者による現代のコミュニティ論である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
70
日雇い労働者が多く住むドヤ街「大阪のあいりん地区(釜ヶ崎)」。かつては単身男性を中心とする非定住の労働者の町、2000年以降は生活保護受給者の急増に伴って貧困者の多く住む福祉の町の色合いを強めている。本書は、あいりん地区の置かれた歴史的背景、日雇い労働者の地域集中に伴って現れた貧困者の社会的包摂と排除、そしてそこで生活する貧困者の高齢化と孤立死、地域のつながりなどを論じている。副題の高齢化と孤立死についてもう少し突っ込んだ話を期待していたが、そうでもなかった。社会学者のフィールドワークの一冊。2017/11/27
おさむ
38
非正規労働者の増加など社会の変化もあってか、釜ヶ崎は関西の若手社会学者の研究テーマとして人気を集めており、本著もそのひとつ。半世紀の流れをうまくまとめている。かつてのスラム街から大阪万博をキッカケにドヤ街に。2000年代以降はホームレス対策や生活保護の適用が進み、定住率が高まった。いまは日雇労働者の供給地でなく、行き場を失った人々のセーフティネットとしての機能が高まっている。西成特区構想なる再開発計画もあるそうです。この街がどう変わっていくのか、注視していきたい。2017/09/30
ゆう。
38
大阪のあいりん地区から見える貧困問題を考察した本です。貧困は見ようとしないとみえませんが、本著はあいりん地区の歴史を丁寧に取り上げており、日雇労働者の町から高齢化が進み生活保護受給者が多くなってきた近年の町の変遷を見るなかで、僕は地域のなかにある貧困問題は、まだまだ表に出ていない問題が多いのではないかと思いました。現在、大阪では西成特区構想がすすめられていますが、僕はこうした構想は貧困をよけいに見えなくし、今不十分ながらもある地域の福祉機能が壊されるのではないかという懸念もしました。勉強になりました。2017/04/28
けんとまん1007
30
この国のある面を典型的に表していると思った。極端ともいえる縦割り行政、一部のステークホルダーのみを見ている経済界、敢えて関係しようとしない地方行政、そして政治屋たち。一方、そこにある隙間を埋めるのは、民間がうごくしかないという現実。これは、この地域に限ったことではないと思う。一人の人として、公的な立場として・・難しい部分があるのはわかるのだが。2017/10/14
かごむし
29
貧困が集中する、大阪市西成区「あいりん地区」。地域の歴史にはじまり、社会の対応や、問題点、「西成特区構想」の行方など、一つの地方を貧困という切り口で定点観測をした、網羅的な内容である。感じたのは、ある特殊な事情を抱えた、特殊な街の物語のはずなのに、地縁、血縁の途絶えた単身高齢者を地域が抱える問題などを読んでいるうちに、これは、まったく他人事ではないと慄然とした。遠く離れた地の老いた両親を思い、まさにその道を歩みつつある自分を思った。同年代の著者の問題意識が近いところにあるのか、様々なことを考えさせられた。2017/12/03
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