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内容説明
20世紀前半、自動車や飛行機に始まり日用品や家電品まで「流線形」は工業デザインとして一世を風靡する。物理学に発するこの言葉は、「障害因子」「ムダなもの全般」を取り除いた優秀さの係数として読み替えられ、価値評価の絶対的基準になっていく。健康神話、ファッションから社会進化論、果ては排外的国家主義へと「純化」の方向に向けて世界を煽る根幹の記号となった「流線形」が席巻した時代とは?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
トムトム
25
流線型という言葉の本来の科学的な意味をはなれ、イメージ戦略やキャッチコピーに踊らされる民衆の愚かさを伝える本でした。現在でも中身も意味もないキャッチコピーだけで民衆を操れると思っている政治家さんは、チラホラと見かけます。そしてそれに踊らされている人々もたくさんいます。現在の人類が進化の最先端!ではなく、100年前から人間というものの本質は変わらないのだと思いました。2022/04/01
♨️
3
アメリカ、ドイツ、日本における「流線型」表象を追う本。アメリカでは「流線型」の意味はどんどん他の発明に拡張されながらそれが次第に「優生学」と結びつく(あるいは、この語に潜在的にあったものが顕在化する)。ナチスドイツでは「流線型」は「ドイツ的技術」となり、むしろ意味の拡張が批判され、それはモダニズム芸術の批判と結びつく。日本では二国のたどった道を辿ろうとするもうまくいかず(拡張される発明もなければ、自国の技術でもなく、おまけに「流線型」は狭い国で活きない)空虚な記号になっていく。2021/01/27
Lieu
2
一九三〇年代、流線形と優生学がどう結びつくのか。例が豊富過ぎるわりに議論の飛躍がないため、カタログを読むようにパラパラとめくるのではなく端から端まで通読すればかなり疲れてしまう本なのだが、裏を返せばかなり大胆な主張をこれでもかというほど慎重に実証していく本である。2020/04/27
こじこ
1
難2024/02/14
ジョン
1
やや踏み込みすぎではと感じる部分もあったが、「流線形」が自動車や機関車の空気抵抗という障害因子を排除しより効率的な移動を実現した空気力学的なデザインという意味を超えて人間の身体やモダンなデザイン、社会組織などへと拡張されていく様について著した本。面白かった。2022/09/05