内容説明
年間10万件を突破し、今なお児童虐待は増え続けている。困窮の中で孤立した家族が営む、救いのない生活。そこで失われていく幼い命を、なぜ私たちの社会は救うことができないのか? 日本社会の家族規範の変容を追いながら、悲劇を防ぐ手だてを模索する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
113
この文章力、この視点。この本を書いてくれたこと、この本に出会えたことに感謝する。虐待をはたらく親を見つめることの重要性。親は悪魔でもモンスターでもない。「親たちの罪というよりも持てる力の弱さ」という。虐待と向き合う人のそれぞれの言葉は重なり合う。「少しでも生きて一瞬でも楽しい時間を持ってもらえたら」「いかに孤独に育つ子どもを減らしていくか」。終章で、加虐で刑を受ける父親への面会の記述がある。口を挟む刑務官の暖かさに涙が溢れる。ここまで来ないと優しい人に出会えなかったのか。虐待は病んだ社会のうつし絵なのに。2018/07/27
ゆう。
50
私たち子どもを支援・援助する側の人間は、虐待問題が起きたとき、真っ先に子どもの安全を考えます。そして、「どうして?」と悲しい気持ちになります。そのため、親や家庭の責任にしてしまいやすい実態があると思います。本著は、こうした近視眼的見方の誤りを自覚させるうえで貴重な本だと思いました。虐待の背景にある社会的問題をしっかりと考える視点を持つことが、ソーシャルワークの視点としてとても重要だと思いました。最後に社会的養育ビジョンについても触れられており、社会的養護のあり方を深く国民的議論する必要性を感じました。2018/01/21
鈴
46
出だしから読み進めるのが辛い内容だった。結局どうしたら、このような痛ましい事件が起こらずに済むのだろう。育児に関して、親だけに責任があるとは思わない。社会全体で育ていくことが理想。社会の関わり次第で救えた命はたくさんあったとも思う。だけどすべての親子に目を光らせることも難しい。虐待かどうかを見極めるのも難しい。「母親は母性があって当たり前、我が子をちゃんと育てられないのはおかしい」と思うのではなく、社会がもう少し気軽に助けを求められる雰囲気であったら違うのだろうか。2019/04/01
あやの
42
既存の家族の形に生真面目にこだわり、援助を求めるすべを知らない弱者が、結果的に児童虐待に陥っていく。この構造は著者も以前から指摘しているが、本作は数年前の厚木の事件と川崎の事件の考察を加え、家族の問題について言及している。「ケーキの切れない非行少年」とも関連するが、「一見普通に生活できているけれど、実は支援を必要とする人」をいかに発見し支援できるかが、児童虐待をなくすために必要なことだと思う。根本的には「虐待した親は極悪非道であり、子育てはすべて家族の責任」とする既存の偏見が変わるべきなのだろうけれど。2020/01/18
鴨ミール
31
「かつて家族には、財産と家業を次世代に送る役割があった。だが、財産や家業を持たない者にとって、家族とはカップルが出会って別れる一代限りのものだ。子どもが生まれ、育ち、巣立ち、それぞれが命を生き、家族は閉じる。ただし、支えを持たない家族は、一代さえも持ちこたえられない。」P2072018/04/15
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