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内容説明
「水枕ガバリと寒い海がある」
「中年や遠くみのれる夜の桃」
「鬼才」と呼ばれた新興俳句の旗手、西東三鬼。反戦・厭戦、エロスや中年感情を、大胆かつモダンな感性で詠んだ句は今なお刺激的である。『旗』『空港』『夜の桃』『今日』『変身』の全五句集に、貴重な自句自解を収録した文庫版の全句集。解説:小林恭二
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
43
先に読んだ本で紹介されていた西東三鬼さんの句集。時間の流れとと共に、扱う題材なども含め、その変化がわかる。これまでに、あまる触れることのなかった風合いがある。素人なりに、その場の映像が浮かんでくるような句が多いと思う。2025/07/10
tonpie
39
読書会で三鬼の散文「神戸」を取り上げたので、ついでに目を通したのだが、読むうちにすっかり耽ってしまった。三鬼の句は抽象を志向しているのだが、言葉はあくまで具象を表象している。それが、ふと、「言葉そのものが具体物」であるかのように見えてくることがある。あくまで個人の感想だが、この関係は、シベリア抑留の画家、香川泰男の絵画作品を思わせるものがある。以下四句。 笑わざりしひと日の終り葡萄食ふ/ 占領地区の牡蛎を将軍に奉る/ 秋の蚊をつかみそこねし女の手 (旗)/ ゴリラ留守の炎天太きゴムタイヤ(変身) 2024/05/20
双海(ふたみ)
14
「水枕ガバリと寒い海がある」等の有名な句に出くわすと”おぉー!”と思いましたが、それ以外の句はあまり興味をもつことができず・・・。2019/09/23
スイ
13
「熱さらず遠き花火は遠く咲け」 この一句だけで泣いてしまった。 疎外感、諦め、憧れ、恐れ、美しいものを美しいと思うこと、熱の浮遊感、そういったものが一気に体の内に溢れて。 『神戸』がとても好きだったので句集を読んでみたらこちらも大変好みだった。 たまらないなと思った句は写していたのだけど、あまりに多いので本書をなる早で買います。 戦争の句も凄まじい。2023/03/31
ぷほは
6
やっぱりいいですな。「赤き火事哄笑せしが今日黒し」とか何度となく読んだ記憶が。後半の自句自解もよく、「姉の墓枯野明かりに抱き起こす」などは『田園に死す』の「新しき仏壇買いに行きしまま行方不明の弟と鳥」のプロトタイプのよう。まあ三鬼の姉は実在し、寺山の弟は虚構なのだが、前者とて誕生時の入れ違いに死んで一目も交わることのなかった姉だからこそ墓を抱き起こすのだろう。だからそれほど距離があることとも思えない。他にも関西にいた頃の奈良春日神社での能、「老年や月下の森に面の舞」なんかもアニメ的と言いたくなる程の演出。2019/01/11