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内容説明
民俗学者・折口信夫は「古代」を知ることに全生涯をかけてきた。それは歴史という意味での古代ではなく、古来の日本人の信仰や習俗が現代までも伝承されている、時代を超えた精神性である。そんな折口が論じ続けた「古代」的な要素――千年も続く様々な信仰行事を、写真と文でたどるかつてない一冊。万葉の旅から沖縄への旅、芸能史への展開まで、彼の研究の流れに沿って、「日本人の心の原点」ともいえる写真に解説を付して収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
59
折口信夫の生涯や作品を写真で辿った一冊。生まれ育った地、明日香や大阪天王寺、妣が国へを幻視した志摩大王崎、ほうとするほど長い沖縄の海岸線や『死者の書』の舞台となった當麻寺、信三遠の祭りの舞台など主要な舞台が訪神や祭り、藝能、貴種流離譚といった折口が論じた習俗と共に紹介されている。今まで折口の名文で想像の中にだけあったものが、ようやく形を伴ったような気もする。それと同時に折口学のエッセンスも紹介されている痒い所に手が届く造りともなっている。本書をガイドに奥深すぎる折口学の山に、分け入ってみたくなるなあ。2018/02/05
ゆきこ
23
日本各地の民俗芸能・年中行事の写真がたくさん、しかもカラーで掲載されている、とてもありがたい一冊です。ぜひ現地に行って生で見てみたいなぁと思いました。何百年もの時を越えて伝わってきた様々な芸能文化が、これからも末永く伝承されていくことを願わずにはいられません。2018/10/09
em
18
依代って折口の造語なんですね。知らなかった。鯉のぼりも依代。折口信夫のエッセンスを、各地習俗のカラー写真を眺めつつ感じられるのは贅沢。読んでいる間ずっと「福」の気に包まれているような、漫画的に表現するならばきっと倖とか慶とかそんな文字が私の周りをふわふわ取り囲んでいるだろうという感じがした。民間伝承の面白さは、体系化されたものからはみだした、実際に人々が受容し変化させてきた信仰が息づいているところにあるのだと思う。2018/11/29
あーびん
17
折口信夫の著作は未読だが、日本のあらゆる祭りや神事、芸能、風習の写真をオールカラーで見れる喜びは大きい。全国各地の“まれびと”のビジュアルの類似や相違を比較するのも楽しい。私のしらない日本がたくさんあってわくわくした。折口学の入門編にもよさそう。2018/07/26
りー
15
折口信夫に大学生として一年半講義を受けた著者。難解で聞き取りにくい講義(を・ゐ・ゑを発音し分ける講義(^^;)で眠気と戦っている中、ある日「まれびと」のイメージが強烈に迫ってきたそうです。後に民俗写真家になり、そのイメージを追うことになります。取材して撮影した祭りは102箇所にも及び、折口信夫読者や、私のようにこれから読んでいこうと思う者には強い助けになるはず。カラー写真なので、例えば各地の「翁」面の違いなどが目で見て分かるのがありがたかったです。2020/09/09