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内容説明
3代将軍足利義満の時代に全盛期を迎えた室町幕府。その50年ほどのち、重臣による将軍謀殺という前代未聞の事件が起きる―。この前期の室町幕府、4代義持、6代義教の時代に焦点を当て、室町殿と有力守護層たちとの複雑で重層的な関係から室町時代の政治史を読み直し、幕府崩壊の一大転換点となった義教謀殺=嘉吉の乱に至る道筋を実証的に跡付ける。
序 章 翳りのはじまり
第一章 足利義持の時代
一 義満後の政治環境
二 足利義持政権の特質
三 在地勢力の動向
第二章 足利義教の嗣立
一 足利義教の登場
二 嗣立期の足利義教とその周辺
三 正長改元の経緯と歴史的意義
四 後花園天皇の擁立と後南朝の動向
第三章 足利義教の時代
一 足利義教政権の特質
二 足利義教の文芸
三 有力守護家の分断政策
四 「恐怖の世」
五 対外交易と国際的環境
第四章 嘉吉の乱への道
一 永享の乱
二 嘉吉の乱はなぜ起こったか
終 章 嘉吉の乱──その後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
59
呉座勇一『応仁の乱』ブームのお陰で、私の住む田舎の書店にも室町時代の歴史本が並ぶ様になった。こういうブームは一緒に踊るべきである。応仁の乱前史であるこの本も良いタイミングで文庫になってくれた。以前、明石散人が『二人の天魔王』(講談社文庫)等の著作で「無類の上」の武家だと絶讚していた足利義教の実際を知りたくて手に取る。歴史書であるから英雄礼讚はしないが、義教のその孤高はよくわかる。義教の専制志向もあるが、幕府の合議制度の弛みも重なって起きた事である。その死は実に淋しい。泣きたくなるぐらいである。良書。2018/03/27
黒猫
27
一般的に馴染みの薄い室町幕府の崩壊前夜が文庫としてよくまとまっている。「魔将軍」こと足利義教がいかにして権力を固めていき、破滅していったか。鎌倉公方足利持氏との全面的な対立により永享の乱を勃発させ相手を駆逐したことにより、新たな火種を関東に撒き、自分を支える大名の山名、赤松、一色等の相続に介入して、専制的な政治を築きあげようとしながら、それにより自らの基盤を弱めてしまったことは皮肉だ。そして何よりも、僧門にいるときから自分の話を聞いてくれた側近の三宝院満済の死は、足利義教にとって痛すぎた。悲運の将軍。2018/01/18
bapaksejahtera
9
最近中世後期東国争乱の時代ばかりを読んで判りにくかったものが、同時代の中央の情勢を知ることで当たり前ながら少しずつ分かってくる。本書は室町幕府4代義持から6代義教の時代、丁度関東では上杉禅秀の乱から鎌倉公方持氏の復帰と滅亡の混乱期に当たる。結局関東に於いて国人層の対立を公方や管領が収め得ず、むしろこれらに巻き込まれ混乱する理由は、室町幕府が公家や宗教勢力と融合し、分立する守護大名層を制御し得ない所にあるらしい。応仁の乱の導入としても有効な書籍ではあるが浅学の身としてはもう少し読み進まないと理解はし得ない。2021/03/23
かわかみ
6
北山殿として朝廷に対して超越的にさえ見える権威となった足利義満でさえ、守護大名に対しては専制君主になりえなかった。本書は恐怖政治を布き、専制君主を目指したが嘉吉の乱で赤松満祐に暗殺された足利義教の治世について丹念に史実を辿っている。しかし、なぜ室町殿の政治権力が北条得宗家や徳川将軍のように強固になりえなかったのかについては本書のように政治プロセスだけを追っても得心は行かない。やはり武士団が解体し国人が跋扈する社会的な対流の中での守護大名、室町幕府、朝廷、宗門の権力基盤についての分析を知りたいところ。2023/11/02
みこ
4
偉大な父に対抗するかのような政策を取り続けた義持、数奇な運命を経て将軍となり自ら身を滅ぼした義教。大河ドラマの主人公になりうるくらいキャラの立った二人である。応仁の乱の伏線が随所に散りばめられていたのだが、守護大名や鎌倉公方など自立性の高い地方自治志向と権力強化を図りたい将軍の中央集権志向の矛盾を抱えたままよく200年もこの体制が維持できたものだ。それだけに当時の人にとって信長の登場は黒船来航に匹敵するインパクトを与えたのではなかろうか2018/02/03