小型哺乳類館

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小型哺乳類館

  • ISBN:9784152097293

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内容説明

息子が連れ帰ったクローン再生マンモスを裏庭で飼うことになった母親、夢の中にだけ存在する夫への愛を語る妻と動揺する現実の夫……突飛かつ壮大なスケールの想像力を通して、家族の拠り所を見つめ直す、新鋭のアメリカ人作家による笑えて泣ける十二の短篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

120
これは変。最初からおかしいのにそのままお話が進んでいく。奇をてらいすぎなものもあるが、変なのにどこか共感してしまうお話に、かえってはまってしまった。何といっても、一つ目の「シャーリーテンプル三世」はもう名人芸。これが最初にあるから、はあ?と思いながら最後まで読む動力となった。母と息子の行き違い。ペットへの愛情。異種なものへの気味悪さ。女性の気遣い。それがうまく30ページほどの間にまとまっている。「追ってご連絡さしあげます」なんてのも、最後に「わあ、これいいね」と思わず声を出しそうになった。2018/02/24

ヘラジカ

39
素晴らしい。最初から最後まで全ての作品の虜になってしまった。活き活きとしたリアルな人生を作り上げ、それをユーモラスな視点でただならぬ物語に仕立て上げる見事さ。どの作品もスパッと切るように終わらせているのに、長引く余韻でページ数からは想像もできないような豊かな読書体験が生まれる。確かにこれがデビュー作ですなんて言われても俄かには信じ難いだろう。どれもこれも完成度の高い類稀なる短篇小説だと思う。すっかり魅了された。恐らく今年度No.1の短編集。"目が離せない偉大な才能"との評も納得。(2017・81)2017/12/12

ニミッツクラス

31
17年(平成29年)の税抜2000円の単行本初版。何か蘊蓄ありげな衣にくるんだ(つまりO・ヘンリーっぽい)日常ドラマの12の断片集。出来事の着地の印象はほぼ直球で、変化球狙いの自分には薄味だったが、ほんの少し現実から逸脱した小話をジェネラルに読みたい人にはお勧めの一冊。本書の作品の幾つかは共通背景のある疑似連作となっている。「おひとりさま熱気球…」や感染症の遺体を引き取りたい「追ってご連絡…」の微妙な不条理さは奇譚としても良い。もう一捻りを狙う人はブラウン他「街角の書店:18の奇妙な物語」を。★★★★☆☆2022/10/31

bianca

31
それぞれ独立した12編の話だけれど、デジャヴのようにちょこちょこ関連ワードが散りばめられているので実は全く無関係でもないようで…。飄々と進む物語の裏側の宇宙のような様々な概念に、ふっと囚われてしまう。この多様な視点。たまにスポッと変な世界に連れていかれてしまうのが面白い。最も好きなのは「追ってご連絡差し上げます」自由奔放に世界を飛び回っていた弟が、謎の感染源と化し、遺体が世界中をたらい回しにされてしまう。笑ってはいけないのに笑ってしまう。ただしすべてオチ無し。2018/04/04

三柴ゆよし

22
創作コース出身のお手本のような文体に、またか……と舌打ちしたが、一読忘れがたい余韻を残す良質な短篇集だった。蘇りの小型マンモスが、恋人の夢に現れる非在の夫が、正体不明の頭蓋骨が、謎の病原菌をばら撒きながら世界中をたらいまわしされる弟の遺体が、なにかのきっかけで他者に手渡され、しかしそこから生じる物語の萌芽は、花開くでも身をなすでもない。残るのはただ、譲渡と共有をつうじて、たしかに袖擦り合わせただれかの手触りであり、そうしてごく秘めやかに形成されゆくネットワークこそを、この作者は大切にしているようにおもう。2017/12/21

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