内容説明
寺島日登志が遺書を書き上げたのは、九月四日の午後のことだった。
心を決めたはずなのに、その日、まさかのひったくりに遭い、遺書と練炭の入った鞄を盗まれる。
聞き覚えのある声で分かったひったくり犯は、以前日登志が話したことのある、宇都宮の「聞き屋」だった。
仕切り直しを図るなか、日登志は以前から目をつけられている岸塚に呼び出される。
奴が恋人である睦美の名を口にするたび、日登志の胸はざわめいてしまう。
一方、友人・神山からの不審な電話で宇都宮駅に向かった瑠梨が発見したのは、ビルから落下して意識不明の神山の姿。血が広がる彼のそばに投げだされているのは、「遺書」だった。
自殺したがりな僕たちは、それでも誰かを救いたい。
『初恋は坂道の先へ』で第1回ダ・ヴィンチ「本の物語」大賞〈大賞〉を受賞した俊英がおくる、謎が思わぬ方向に展開する切ない青春ミステリー!
※本書は、2016年11月30日に配信を開始した単行本「救ってみろと放課後は言う」をレーベル変更した作品です。(内容に変更はありませんのでご注意ください)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
32
遺書を書いて自殺すると決めたのに、以前相談した聞き屋・神山に遺書と練炭の入った鞄を盗まれた日登志。そんな彼がいいように使ってくる岸塚に呼び出され、ビルから落下した神山の状況を調べるよう命令される青春ミステリ。希望のない日々を送っているように見える日登志と、たまたま宇都宮に帰ってきて神山から遺書を手渡された友人・瑠梨。二人の視点から交互に語られてゆく物語は、新事実が明らかになるたびにその様相を変えていって、終わってみれば最初抱いた印象とは全く異なる物語となっていて驚きました。読後感も悪くなくて次回作に期待。2016/12/16
るっぴ
27
藤石波夫作品初読み。自殺しようとした日登志が遺書と自殺用の練炭、睡眠薬を引ったくられるとこから始まる話。サクッと読了。最後、もやっとした感じ。2017/01/22
hk
10
「卒業していない試験は追いかけてくる」 これは私淑(ししゅく)している田坂広志氏の箴言だ。さて本作では、学生時分に救えなかった大切な何かに自責の念を抱いたまま悶々と生きている若者たちが描かれる。時が下り、期せずして彼らに捲土重来の機会が訪れるのだが、果たして彼らは追試をクリアーすることが出来るのだろうか。2017/01/25
ともりぶ
4
お互いに救い救われる話。いじめやDVなど。ミスリーディングさせようとしているのか話が小出しにされるからわかりにくい。2017/01/09
どんぶりめし
3
僕の「死の理由」は盗まれた―(初版帯コメントより)盗まれた『遺書』を巡り、二人の主人公の視点から物語を紐解いていく青春ミステリーです。●舞台となる宇都宮・鹿沼の丁寧な記述と、作者の細やかな状況描写とが相まって、とても美しく少し野暮ったい世界観が生まれていて、読んでいて心地良く感じました。二転、三転とする『遺書』の意味付けは秀逸です!●作中に登場する、とある遊びの解釈がちょっと面白いです♪2017/01/26