創元推理文庫<br> レイチェル

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創元推理文庫
レイチェル

  • ISBN:9784488206031

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内容説明

従兄アンブローズ――両親を亡くしたわたしにとって、彼は父でもあり兄でもある、いやそれ以上の存在だった。彼がフィレンツェで結婚したと聞いたとき、わたしは孤独を感じた。そして急逝したときには、妻となったレイチェルを、顔も知らぬまま恨んだ。が、彼女がコーンウォールを訪れたとき、わたしはその美しさに心を奪われる。二十五歳になり財産を相続したら、彼女を妻に迎えよう。しかし、遺されたアンブローズの手紙が、想いに影を落とす。彼は殺されたのか? レイチェルの結婚は財産めあてか? せめぎあう愛と疑惑のなか、わたしが選んだ答えは……もうひとつの『レベッカ』として世評高い傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

362
語り手であるフィリップの回想記。語りは、すべてが終わったところから始められ円環を結んで終わる。ただ、残念ながら終結部はあまりにも唐突だ。運命を天に委ねすぎているとの感を免れない。フィリップと、その叔父アンブローズの2代にわたるファンム・ファタルたるレイチェルの作術と悲劇(それは、さまざまな意味において)の物語。女性の客観的な視点(ルイーズがこれを代表するだろう)からは考えられないだろうが、男性の読者たる私にはフィリップがレイチェルに惑溺してゆくのはわからなくもない。彼女はまさにファンム・ファタルなのだ。 2018/07/13

Kircheis

345
★★★★☆ 名作『レベッカ』を思わせる、死者を起点とした三角関係と悪女の存在感が読者を鬱状態に陥れる極上のサスペンス。 とにかく主人公のフィリップが、どうしようもなく愚かで自己中なので、読んでいて終始イライラしてしまう。確かにレイチェルは貪欲で計算高い悪女だと思うが、それは単に自分の欲に忠実というだけで、そこまで悪いことではない。むしろ、自分なりの誠意はアンブローズに持っていたようだし… 最初から最後まで読者をうんざりした気分にさせる、著者の特異な能力が表れた力作。2023/04/07

遥かなる想い

236
全編に漂うレイチェルの妖しい魅惑的な雰囲気が 印象的だった。 読んでいると、なぜか 懐かしい気持ちにさせて くれる展開が、素直に 嬉しい。 もうひとつの『レベッカ』らしいが、そこに居るだけで、男の心を乱す 女レイチェル… 男女の心の動きを、ミステリー要素を 入れながら、巧みに描く。 定番の、愛に溺れて破滅 していく展開だが、精緻な緊迫した心理描写が秀逸 である。何が真実で、何が企てなのかよくわからないまま 終盤に向かい…最後は、突然、読者だけ、置いていかれる …唐突な終わり方も心地よい、そんな物語だった。2015/08/02

アン

105
フィリップを育ててくれた従兄のアンブローズ。彼は結婚後に急逝してしまい、フィリップは妻のレイチェルを恨んでいましたが、彼女がコーンウォールを訪れると、その美しさに心を奪われてしまいます。大切な存在を共有する嫉妬、苦悩に満ちた哀願の表情、遺された手紙における疑惑。荒涼とした自然やお屋敷での暮らしが目に浮かび、愛に翻弄されるフィリップの心の揺れが精緻に描かれています。レイチェルはファム・ファタールなのでしょうか…。『レベッカ』と双璧を成す、スリリングな展開が魅力的なサスペンス。 2020/03/31

まふ

96
「レベッカ」の姉妹編とされるサスペンス小説。イタリア旅行中の英国コンウォールの領主アシュレー家当主のアンブローズを現地結婚後に謀殺したのではと疑われる新婚の妻レイチェル。そのレイチェルに次第に恋慕し、折角継承した遺産も家宝もあげてしまう従弟のフィリップ。本当にレイチェルは悪人なのか。冷静なレイチェルと舞い上がって沸騰する単細胞のフィリップ、それを固唾を飲んで見つめる地域有力者たち……、それぞれの心理が的確な描写によって冷静に語られ、最後の数ページは目を瞠ってめくる第一級のサスペンスだった。2023/03/13

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