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内容説明
個々の命題は独立に確証されることはない、一つの集まりとしてのみ検証されるのだ――ホーリズムの立場から分析哲学に新たな地平を拓いたクワインの思考を、平易に丹念に解説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ecriture
6
正しい翻訳は決められない、ただ複数の翻訳が「使える」だけだとする「翻訳の不確定性」が大変小気味良い。「信念」が存在論的相対性のもとにあるとき、「文化帝国主義」などもはや問題にはならないのだとする論の運びもきれいだと感じる。プラグマティズムが社会の複雑化に逆行する妥協の産物ではなく、必要十分な保守性を備えた魅力的な思想として立ち上がってくる。2010/04/24
ステビア
4
読者数に驚き2013/12/12
大道寺
4
20世紀後半の分析哲学に大きな影響を与えたアメリカの哲学者クワインの人生と哲学についてわかりやすく書かれている。クワインは論理学者でもあり、論理学方面での業績も多々あるようだが、記号論理学に深入りしなくても読めるように、一般の読者向けに書かれた本書では触れられていない。(1/4)2012/08/15
左手爆弾
2
数理哲学と現代論理学を若い時期からものすごく速度で吸収し、論理実証主義と分析哲学に進む。ラッセルやカルナップの影響は強いが、常にその批判者でもあった。究極的に、命題は規約的でしかない。言語の問題から科学哲学へと進むと、「外的世界について個々の言明は集合としてのみ経験の審判を受ける」というホーリズムのテーゼが前面化してくる。そこには「プラグマティズム」が見られ、「観念」を持ち出すことに強く抵抗する。翻訳の不確実性は「翻訳は不可能」ではなく「あらゆる翻訳が可能」という問題である。2016/09/05
なつめいろ
2
①初出の概念には必ず説明があるので予備知識はほとんど要らない。というかこの本を読んでそういう意味だったのかと腑に落ちることが何度もあった。クワイン哲学だけでなく、哲学一般のよい勉強になります。②ホーリズム、翻訳の不確定性、認識論の自然化などクワインの多岐にわたる思考の関連性がしっかり説明されていて芋づる式に理解が進む。③地味な議論の積み重ねがとんでもないところに連れて行ってくれるということを体感できた。私の「本当の信念」を決めるのは私自身だという自明に思えることが、実は言えないかもという結論はしびれた。2015/01/22