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内容説明
20世紀が秘匿した最後の巨匠とされるポルトガルの作家の書。異なる人格となって書かれた作品群のひとつ「不穏の書」と諸人格による「断章」をおさめる。旧版を大幅に増補改訂。 解説=池澤夏樹
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マエダ
71
”ペソアについて語ることは容易でない。ペソアという詩人は一人ではなく、複数人いるからだ。自分とはことなる人格とエクリチュールを持った数人の異名者たちを創造した詩人は、ペソアをおいて他にはいない。”このての話はどんぴしゃ好みである。2018/03/26
やいっち
68
この新編じゃなく、旧版で読んだっけ。当時はあっさり撥ね付けられた。その屈辱感ばかりが残ってる。確か、2001年に開設したホームページに感想……にもならない呟きを書いた。情けなくもホームページは、ニフティがホームページサービスを止めた……全ての雑文が消滅。いつか再読できるだろうか。
K(日和)
40
池澤夏樹の解説を読んで納得。とりとめのなさに、読んでいる自分がしどろもどろした。これは本になっているが、ひとつひとつが分裂可能で引用可能な存在なのだ。1日1ペソア、始めるのもありかも。まだ、自分に憑かれるほど入り込めてはいないけれど、また改めて読みたい一冊。2017/02/24
りー
37
フェルナンド・ペソア。彼はきっと正直な人。自分に嘘をつけない人。強迫観念の人。僕らのように「わたし」という空虚をなかったことに出来ず、その昏い洞を覗き込んでしまった人。彼の思考や思想は人の心に普遍的にある「何か」をえぐり出してしまったようで、あまりの身近さに僕は思わず身を引いてしまった。嫌悪からでなく、共感してしまう恐ろしさから。僕はきっとこれからも己の虚無から目を逸らし、前を向いて生きてゆくことだろう。けれどもそれは無垢から来る前向きさではない。ペソアという影法師の存在を知ってしまったが故に。2014/02/24
zirou1984
34
「私が私であることの不確かさ」、「私が私であることの耐えられなさ」―そんな感覚を抱いたことがあるならペソアを読もう。3つの人格、3つの異名を用いて膨大な散文を残したポルトガルの詩人。貿易会社に勤めて生計を立てながらも、その陰で書かれ続けた散文は始まりも終わりも無く、断片的な形式を用いて「断片化された私」について述べ続ける。その言葉の切れ端はニヒリズムの力を借りてエゴイズムを駆逐するが、それでもナルシズムからは逃れられない己の弱さを丁寧に暴き出しており、それは砕け散った私の欠片とまるで見分けが付かないんだ。2013/02/22