内容説明
数字では語れない、あの日の出来事――。
岸政彦さん、星野智幸さん、推薦!
「被災地」は存在しない。「被災者」も存在しない。
土地と人が存在するだけだ。
「それでも生きていこうとする人々」の物語が、胸を打つ。
(岸政彦)
ここには、あなたを含め、この本に書かれていない被災した人すべての物語が、ぎっしりと詰まっている。
その見えない言葉に目を凝らして、読んでほしい。
(星野智幸)
「リスク論」からこぼれ落ちる生を探し求めて、東北、そしてチェルノブイリへ――。
若き記者による渾身のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
zirou1984
19
震災によって変わってしまったこと。言われてきたこと。そして、言葉にできなかったこと。新聞記者として被災地を訪れ、その後も丁寧な取材を重ねることで、故郷を失った人、家族と別れてしまった人たちの、声にならなかった声を丁寧にすくい上げている。例え「安全」と言われても決して「安心」できない、その隙間にある何かを、懸命に言語化しようとしている。それは人間が人間らしく生きるための、世界を私たちが生きられる世界たらしめるための、根本的な呼びかけなのだと思う。これは著者なりに紡いだ「友情の点呼に答える声」なのだ。2018/06/27
みやざき しんいち(死ぬまでにあと1,000冊は読みたいんだ)
8
(50/1000)東日本大震災から7年。僕は今でもこの大震災後の日本にどう向き合っていいのか戸惑っているところがある。大災害はこの大震災の前にもいくらでもあったし、このあと7年経った現在まで、加速度的に災害は増えている気がする。この本は、東日本大震災を目の当たりにした人たちへの取材をまとめた一冊。私達はこの大震災をどう次世代に伝えていくのか?どう向き合うのか?一つの方向性が示されていた。2018/07/26
デューク
7
「生き残った人は、どう語り継いでいくかという問いの過程を、生きている」。東日本大震災、原発事故の取材手記。 「分かりやすさ」が求められる昨今の報道。膨大な情報を乱暴に要約して、大きすぎる感情を四捨五入して、短いニュースはつくられる。それが「伝える」という作業なのかもしれない。だが筆者はそこに疑問を抱く。簡単に読める本でもなければ、単純に楽しめる本でもない。だがこの本を読んで感じる「もやもや感」こそが、筆者が取材を通じて感じ続けてきたことであり、読者と共有したいと願う感情なのではないだろうか。いちおし2018/05/27
nekomeys59
3
本書を読むまで、あの震災で勝手に持っていた印象を塗り替えてくれる。被災地には、 読者と変わらず住む人々がいる。「わかりやすさ」では伝わらない事と「被災者」として一括りにされる人々の「個々の想い」と「語る言葉」があると本書で教えられた。当事者ではない者に、簡単には理解できないこともよく伝わる。2020/06/02
やん
3
取材の対象は福島の米農家、帰還者、避難者、大川小学校で子供を亡くした親、親を亡くした子、チェルノブイリ、元東電職員など。漠然とした印象の本。しかしそれは物語ありきで取材し、人々が語る言葉を切り身のように配置した「震災本」ではないから。言葉にならないだけではなく本人にその存在さえも気づかれていない思いがあるということを心に置きながら著者は話を聞こうと努める。せっかちに理解しようとしないこと。理解からこぼれ落ちていくものがたくさんあること。手っ取り早く済ませてしまおうとするのは自分が閉じているからか。2020/05/01




